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2022/02/03

毛利梅園「梅園介譜」 水蟲類 虎蟳 / タカアシガニの甲羅(背面・外骨格を除去した腹面の二図)+鉗脚の指節と前節(左右一対)

 

[やぶちゃん注:見開きで一枚三枚分の強烈な大図。底本の国立国会図書館デジタルコレクションの自筆の梅園梅園の「介譜」ここ(「脊甲圖」)と、ここ(「同甲圖」(「俯」は「うつぶし」と読んでおく)と、)と、ここ(左右の「螯圖」(鉗脚))からトリミングした。後の二図はキャプションの合わせて画像を正立させた。]

 

Asida1

 

虎蟳(コジン) 虎獅(コシ)

「大がに」・「手長がに」・「嶋がに」【小苗(せうべう)の者、「渡り蟹」とすは、非なり。「渡りがに」、別に有り。】

 

「福州府志」に曰はく、『虎獅、形、虎の頭に似たり。又、「指哺子(シホシ)」と名づく。紅赤(コウシヤク)の斑点有り。螯(はさみ)、扁にして、爪と與(とも)に、皆、毛、有り。』と。

 

 

脊甲圖【仰(あふぎ)。】

 其の一

 

[やぶちゃん注:以下、左(頭頂部)下方に頭部左に「┌」の指示線を延ばして。]

    此の所より、螯、生ず。

 

 

此の蟹、殻・螯(はさみ)・ほを、倉勝尚、之れを送る。其の殻の大(おほい)さ、廻(めぐ)り、方(はう)壹尺四寸ヨ[やぶちゃん注:「餘」。以下同じ。]。螯の長さ、貳尺五寸ヨ。常の蟹の螯は、腕(ひじ)、折れて、物を螯(はさ)む。此の者、一つ[やぶちゃん注:「のみ」の意。]、別にして、螯手(はさみて)、曲がらず、一直(いつちよく)なり。竹筒(たけづつ)のごとし。足は、手より短くして、細きよし[やぶちゃん注:「由」の実物の歩脚は見ていないので、以下と合わせて「伝え聴き」なのである。]。最も、「一躰、相當するは、螯より、殻・足迠(まで)、長さ、五尺にすぐる。」と云ふ。

 

戌、閏四夏十有八日、眞寫す。

 

 

Asida2

 

同甲圖俯(うつぶし)

 其の二

 

 

Asida3

 

 

螯 圖

 

 

 

[やぶちゃん注:この迫力満載の図群は、現生の節足動物では世界最大である、

抱卵亜目短尾下目クモガニ科タカアシガニ属タカアシガニ Macrocheira kaempferi の成体の甲部背面部(脚を総て取り除いたもの)、及び、同一物の腹面部のそれを覆っている外骨格部(口前部から総ての外顎部から後の腹部腹甲腹節、及び、それを囲む下肝域・頰域と脚基部の甲)を全部除去し、内臓諸器官(乾燥済み)が露出したもの、及び、左右の鉗脚の指部と前節を描いたもの

である。指節の可動部から、左右は正しい。同種については、幼体を描いた先行する「水蟲類 虎蟳(ワタリガニ・テナガ・シマガニ) / タカアシガニ」の私の注を見られたい。

「虎蟳」既出既注であるが、再掲すると、中文サイトのこちらの「蟳虎魚贊」という絵を見ると、ガザミ属 Portunus らしい個体が描かれてあり、中文サイトを見るに、同属の複数種にこの漢字を当てているから、本来はワタリガニ・ガザミ類を指す語である。巨大さと異形から、次の「虎獅」と同じく、かくおどおどろしい漢字を当てたとしてもおかしくはないが、漢籍に現われたこれらは、やはり挟まれると、甚だ危ないワタリガニ類・ガザミ(短尾下目ワタリガニ科 Portunidaeのカニ類及び同科のガザミ属ガザミ Portunus trituberculatus 、時にイシガニ属 Charybdis 或いはイシガニ Charybdis japonica の異名・流通名)を指すものであり、近世以前の中国ではタカアシガニは知られていなかったものと思われる(奇品の標本として本邦や琉球から送られた可能性はある)。少なくとも、中国沿岸の深海には棲息していない。分布域は岩手県釜石沖から九州南岸の大平洋沿岸・九州西岸・沖縄で、一九八九年になって、台湾の東方沖で見つかってはいる。

「小苗(せうべう)の者」幼体個体。「こなへ」では、ここでは少し似合わないと判断して音読みした。

「福州府志」清の乾隆帝の代に刊行された福建省の地誌。

「虎獅、形、虎の頭に似たり」ガザミ類がかく形容されたとしても腑に落ちる。

「指哺子(シホシ)」大型のガザミ類(例えばワタリガニ科ノコギリガザミ属 Scylla のノコリギガザミ類。中国沿岸に棲息する)に挟まれると、骨折はするであろう。それを「指を食われるぞ!」(「哺」は「食物を口に含む」の意がある)注意するであろうことは想像出来る。但し、「紅赤(コウシヤク)の斑点有り。螯(はさみ)、扁にして、爪と與(とも)に、皆、毛、有り」という総ての条件を満たす種を私は想起出来ない。

「ほを」「ほお」「頰」か。甲羅の腹面を指して言ったものと採る。実際に以上の部位で示した通り、甲羅腹面を覆う外骨格の内、中央部分を生物学上、「頰部」(きょうぶ)と呼ぶ。

「倉勝尚」既に何度も出てきた、梅園の同僚で幕臣(百俵・御書院番)の倉橋尚勝。かなり頻繁に彼に生物資料を提供したり、貸したりしており、梅園には甚だ頼りになる友人であった。

「殻の大さ、廻り、方壹尺四寸ヨ」甲羅の四方長で一辺が平均、四十二センチ二ミリメートル弱余り。現行では、タカアシガニの甲羅は最大で甲幅四十センチメートルとするから、超特大の個体であったことが判る。

「螯の長さ、貳尺五寸ヨ」描かれた実際は鉗脚の前節から指節の先端までで、四十五センチメートル二ミリメートル余り。

「常の蟹の螯は、腕(ひじ)、折れて、物を螯む。此の者、一つ、別にして、螯手、曲がらず、一直なり。竹筒のごとし」梅園は鉗脚がこれで総てだと勘違いしていたことが判る。第一図の指示線部分から、第三図の「左」のそれが、直接、生えていると考えたのである。これはまた、想像するに、確かに、独り、奇体な蟹となろう。

「長さ、五尺にすぐる」脚を延ばした全最大体長は一メートル五十二センチメートルを越える。これは本超巨大個体の大きさではなく、タカアシガニの平均標準の体長を言っているようである。本種の成体の♂では鋏脚が脚よりも長くなり、大型の♂が鋏脚を広げると、実に三・八メートルに達するとされる。

「戌、閏四夏十有八日」天保九年戊戌(つちのえいぬ)か。それならば、同年の閏四月十八日は、グレゴリオ暦で六月十日である。]

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