萩原朔太郞「拾遺詩篇」初出形 正規表現版 感傷品・眞如
感傷品
ほつねんなれば
魚にとへ
しんじつなれば
耶蘇にとへ
眞如
金のみ佛
金の足
一列流涕なしたまふ
光る白日(まひる)のうなべりに
とをのおゆびを血はながれ
いたみてほそき瀧ながれ
したゝるものは血のしづく
われの戀魚の血のしづく
光る眞如のうなべりに
金のみ佛
金の足
一列流涕なしたまふ
[やぶちゃん注:孰れも独立した詩篇であるが、詩想に強き共時性と親和性があり、しかも二篇並べて大正三(一九一四)年十月号『風景』に発表しているので、特にセットで電子化した。
「感傷品」あたかも仏典の中に「かんしやうぼん」なる経典があるように読めるが、私は知らない。ネット検索でもかかってこない。朔太郎の仮想のそれであろう。
なお、底本に草稿指示はない。]
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