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2022/02/11

毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類  牡蠣(カキ) / マガキ

 

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。]

 

Magaki

 

蛤蚌類(カウハウルヰ)【凡そ、介類、甚だ多し。諸州の土地によりて、有無、あり。異品多し。究め知るべからず。其の十の一を以つて寫すのみ。】

 

「本草綱目」に曰はく、

  牡蠣(ボレイ)【「加幾(かき)」。】 牡蛤(ボカウ)【「別錄」。】 蠣蛤(かき)【「本經」。】 古賁(コフン)【「異物志」。】 蠔(カウ)

  蠣黃(レイワウ)【「かきのみ」。「かきのにく」。】

 

◦牡蠣(かき) 『海邉の石につきて、自然に生ず。海人、打ちくだきて、肉を取る。大小あり。冬・春、味、美なる故、取り商ふ。初夏より後、秋に至る迠(まで)、食はず。凡そ、介の類、皆、自然に胎生す。又、卵生あり。只、蠣(かき)のみ化生(かしやう)す』。「本草綱目」にも載せたり。又、「泉南雑志」に曰はく、『泉(せん)に、石灰、無し。蠣房(レイバウ)を燒きて、之れと爲(な)す。堅白(ケンパク)・細膩(サイジ)、久しく落ちず。』と。蠣粉(レイフン)を以つて、壁、或いは、池なぞを、ぬる事、日本、又、然り。蠣(かき)は石に付きて、一處(いつしよ)にありて、動かず。故に牝牡(ヒンボ/めすをす)の道、なし。子を産す、皆、牡なり。故に牡蠣と云ふ。陳藏噐、之れを說きて、『動かざるもの、蠣(レイ)の外(ほか)にはまれなり。』と。

 

甲午(きのえむま)九月六日、葛飾の某氏、手猟(てどり)と為(な)し、之れを送れるを、眞寫す。

 

[やぶちゃん注:これは、

斧足綱ウグイスガイ目イタボガキ科マガキ属マガキCrassostrea gigas

である。見た感じでは、恐らくは六個体(一つは身を表わしてあり、左端の小さな白っぽいそれは脱落した個体の破片)が集合しているように見える。私は強力なカキ・フリークで、その渾身の注を附した「大和本草卷之十四 水蟲 介類 牡蠣」を見られたいが、まさに梅園はそれを参考にして解説を記していることが判る。他に私の比較的最近の電子化注である「日本山海名産図会 第三巻 牡蠣」もお薦め!

「蛤蚌類(カウハウるゐ)」「蚌」を「バウ」と読むのは慣用読み。これは狭義には広く海産・淡水産の二枚貝を指す漢語である。「本草本綱」では巻四十六の「介之二【蛤蚌類二十九種・附一種】」の「蚌」の項で、

   *

蚌と蛤と、類を同じくして、形を異とす。長き者を、通じて、「蚌」と曰ひ、圓き者を、通じて、「蛤」と曰ふ。其の字【「丰(ハウ)」に从(したが)ひ、「合(カフ)」に从ふ。】、形に象(かたど)るなり。其の類、甚だ繁(おほ)し。江湖の渠瀆(きよとく)[やぶちゃん注:みぞ。どぶ。]の中に、之れ、有り。大なるは、長さ七寸、狀(かたち)、牡蠣(かき)の輩(うから)のごとく、小さきは、長さ三、四寸、狀、石決明(あはび)の輩のごとし。其の肉、食ふべし【甘鹹にして、冷。】。老蚌は珠を含む。其の殻、粉と爲し、錠(ぢやう)[やぶちゃん注:錠剤。]と成して、之れを市(う)る。之れを「蚌粉(はうふん)」と謂ふ。以つて墻[やぶちゃん注:「牆」に同じ。土塀。]壁(しやうへき)を飾り、墓壙(ぼくわう)を闉(ふさ)ぐ。如-今(いま)は石灰を用ふ。蚌の粉【鹹にして、寒。】は、疳を治し、痢幷びに嘔逆を止め、癰腫(ようしゆ)に塗る。

   *

と述べているが、ざっくり言ってしまうと、「蛤」は一般的には、斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ科ハマグリ亜科ハマグリ属ハマグリ Meretrix lusoria に代表される丸みを帯びた二枚貝全般(海産・淡水産を問わず)を指し、「蚌」は横長の淡水産のイシガイ科Unionidaeの大型のそれを総称するものと考えておけば、間違いはない。この大雑把でレベル的に釣り合わないのは、「本草綱目」で判る通り、中国の本草学の歴史に於いて、魚介類研究の対象が、概ね各王朝の首都が長く内陸にあったため、淡水産を主流としており、海産のそれらの生態観察を個別に親しく行えた本草学者は、そう多くなかったからである。というより、海産生物の個別名や識別が一般市民レベルで出来る国民は、世界的に見ても、現在でも日本人の平均的国民が圧倒的な知識量を持つ特異点であると言ってよいのである。より詳しくは、寺島良安の「和漢三才圖會 卷第四十七 介貝部」の「蚌(ながたがひ どぶかい)」及び「文蛤(はまぐり)」の項の私の注を見られたい。

「其の十の一を以つて寫すのみ」「その計り知れない全種量の内、僅かな種を採り上げて、図示することしか私には出来ない。」の謂いである。

『「本草綱目」に曰はく、牡蠣……』「漢籍リポジトリ」の先に示した巻四十六の「介之二」の巻頭を飾っている。

「別錄」時珍が同書で頻繁に引くもので、漢方医学の最重要古典の一つである「神農本草経」(次注参照)とほぼ同時代(一~三世紀頃)に中国で作られた、同書と並び称される本草書「名医別録」のこと。植物(葉・根・茎・花)は勿論、鉱物・昆虫・動物生薬など五百六十三種の生薬の効能や使用目標などが掲載されている。作者は不詳。原本は散佚したが、六朝時代の医学者・科学者にして道教茅山派の開祖でもあった、「本草綱目」でも出ずっぱりの感のある陶弘景(四五六年~五三六年)が一部を諸本の抜粋から集成し、校訂も加えている。

「本經」「神農本草経」。後漢から三国の頃(紀元後二五年から二八〇年。但し、紀元後五世紀とする説もある)に成立した本草書で、伝説の神農氏の後人の作とされるが、実際の撰者は不詳である。個々の生薬について解説したもので、中国最古の薬物学書とされる。三百六十五種の薬物を上品・中品・下品(上薬・中薬・下薬とも称する)の三品に分類して記述しており、上品は、無毒で長期服用が可能な養命薬、中品は、毒にもなり得る養性薬、下品は、毒が強く長期服用が不可能な治病薬としている。五〇〇年に先に記した陶弘景が本書を底本として「神農本草経注」全三巻を撰し、さらに「本草経集注」全七巻を撰している。陶弘景は前の「名医別録」の佚文と合わせて、内容を七百三十種余りの薬物に増量している。本書はそれ以降、正統の本草書の位置を占めるようになったが、現在は敦煌写本の残巻や「太平御覧」への引用などに過ぎない(ここは当該ウィキを参考にした)

「異物志」「嶺南異物志」。唐代の吏員であった孟琯(もうかん)が撰した、嶺南(現在の広東省・広西チワン族自治区の全域と湖南省及び江西省の一部に相当する地域の古称)地方の珍奇な生物などについて記録した博物書。

「泉南雑志」明の陳懋仁(ちんもじん)の書いた現在の福建省泉州市附近(台湾の対岸。グーグル・マップ・データ)の地誌。

「蠣房」カキの身を除いた殻のこと。

「堅白」非常に堅く白いこと。

「細膩」(「膩」は「脂(あぶら)」の意で、「きめ細やかですべすべしていること」。

「陳藏噐」(生没年未詳)は唐の玄宗期の本草家で医師。彼の著した「本草拾遺」(七三九年前後の成立)は「本草綱目」にもよく引かれている。完本は伝わらないが、引用が多く残り、ある程度までの原本内容は判っている。

「甲午(きのえむま)九月六日」天保五年。グレゴリオ暦一八三四年十月六日。]

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