萩原朔太郞「拾遺詩篇」初出形 正規表現版 小曲集
小曲集
夢みるひと
×
ほゝづきよ
ひとつ思(おも)ひに泣(な)けよかし
女(をんな)のくちにふくまれて
男(をとこ)ごゝろのさびしさを
さも忍び音に泣けよかし
×
ほんのふとした一言(ひとこと)から
人(ひと)が憎(にく)うてならぬぞへ
ほんのその日(ひ)の出來(でき)ごゝろ
つい張(は)りつめた男氣(をとこき)が
しんぞ可愛(かは)ゆてならぬぞへ
[やぶちゃん注:大正二(一九一三)年十月一日附『上毛新聞』に発表された。
・二箇所の「ならぬぞへ」はママ
・「男氣(をとこき)」のルビの「き」はママ。無論「をとこぎ」が正しい。但し、新聞なので、ルビは勝手に新聞社が附したものと考えた方が無難。
読みが五月蠅いので、除去版を以下に示す。
*
小曲集
夢みるひと
×
ほゝづきよ
ひとつ思ひに泣けよかし
女のくちにふくまれて
男ごゝろのさびしさを
さも忍び音に泣けよかし
×
ほんのふとした一言から
人が憎うてならぬぞへ
ほんのその日の出來ごゝろ
つい張りつめた男氣が
しんぞ可愛ゆてならぬぞへ
*
なお、底本全集第二巻の「習作集第八卷(愛憐詩篇ノート)」の中に本篇の草稿が別々にある。以下に示す。後者は無題だが、ノート『卷末の目次では「えちうど」との題を附している』と編者注がある。
*
ほゝづき
ほゝづきよ
ひとつ思ひに泣けよかし
女のくちにふくまれて
男ごゝろのかなしさを
さも忍び音に泣けよかし
*
△
ほんのふとした一言(ひとこと)から
ひとが憎うてならぬぞへ
ほんのその日の出來ごゝろ
つい張りつめた男氣が
しんぞ可愛ゆてならぬぞへ
*]
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