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2022/02/13

毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 針刺貝(トゲガイ) / ホネガイ

 

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。上部に前の「ミナ」の解説が、左に「ミゾ貝」の図が食い込んでいるので、マスキングした。下地がかなり汚れているので、それが判ってしまうのはお許しあれ。]

 

Honegai

 

「百貝圖」に出づ。    「片部貝(かたべがい)」。「角片部(つのかたべ)」。

  𢙣鬼貝【「あつきがい」。】[やぶちゃん注:「𢙣」は「悪」の異体字。]

  針刺貝(とげがい) 「本草」に出づ。刺螺【和名「はつき貝」。】

予、曰はく、「はつき」は、其の壳(から)、刺歯(シシ/とがれる は)のごとし。「歯附(はつき)」なるべし。[やぶちゃん注:「壳」は「殼」の異体字。但し、実際の原本の字体は現在の「殻」の(へん)だけにしたものである。]

壬巳(みづのえみ)林鐘(りんしよう)四日、霊石園の藏すを、乞ひて、之れを眞寫す。

 

[やぶちゃん注:この角度の図一枚からでは、一種に同定するのが難しい。スケールを比較するものがなく、全体のサイズも判らないし、他人の蔵品で、採取されてから、どれくらい経過しているかも判らず、棘の本数も果して生時のままであるかどうか不明である。後補としては、

腹足綱直腹足亜綱新生腹足上目吸腔目Hypsogastropoda亜目新腹足下目アッキガイ上科アッキガイ科アッキガイ亜科アッキガイ属Murex

までは絞れるが、まずは以下が候補となる(種小名のアルファベット順)。

ホネガイ Murex pecten

アッキガイMurex troscheli

オニホネガイ Murex tribulus

他に、エンマノホネガイ Murex tenuirostrum がいるが、これは下方に伸びた水管上の棘がもっと疎らなので、外してよく、コアクキガイ Murex trapa に至っては、それがもっと少ないので除外出来る。キンスジアッキガイ Murex concinnusは当該和名のその色を認めないので、これも外す。蔵している正体不明の「霊石園」(「りやうせきえん(りょうせきえん)」と読んでおく。唐風の号であろう)がどこから手に入れたものか判らぬが、以上の種の分布は、ホネガイ(「骨貝」は魚の骨に似ていることが由来)とアッキガイ(文字通り「惡鬼貝」である)が孰れも本州中部以南で、オニホネガイ本州南部以南で、これが江戸からは一番遠い(と言ってもそれが限定する要素には全くならない)。この内、最も大きくなり、頑強な種はアッキガイであるが、同種は螺状脈上に褐色の線状の帯を有するので、候補から外していいように思われる。ホネガイはタイプ種として知られるが、実は上記三種に中では、小型で、しかも繊細な感じを最も与える種である(この図はその繊弱な雰囲気をよく醸し出しているように感ずる)。オニホネガイは水管上に三列の長棘列と間棘列する(図はそのようにも見えなくはないが、この方向からのみでは、チカチカしてよく判らない)。また、ホネガイよりも棘数が少なく、やや太く、さらに棘の間隔はホネガイよりも広いので、私は本図の候補としては、

ホネガイ Murex pecten

に分(ぶ)があるように感じているので、トップ表記は「ホネガイ」とした。他の種であるとなら、その根拠を解説してお教え下されたい。

「百貝圖」寛保元(一七四一)年の序を持つ「貝藻塩草」という本に、「百介図」というのが含まれており、介百品の着色図が載る。小倉百人一首の歌人に貝を当てたものという(磯野直秀先生の論文「日本博物学史覚え書」に拠った)。

「片部貝」「角片部」霊元天皇の命によって作られ、宮中に献納された、江戸初期の貞享五・元禄元(一六八八)年に、京の商人(呉服商か)吉文字屋浄貞(「きちもんじやじょうてい」と読んでおく)が描いた貝類図譜「浄貞五百介圖」があるが(序文は平賀源内)、Terumichi Kimura氏の貝類サイト「@TKS」の「貝の和名と貝書」の「浄貞五百貝圖」について、墨絵で描かれた図譜で、一葉の『中に沢山の貝をまとめて書いてある。それぞれの貝に名前を付けているが、解説は無い。名前は非常に独特で南方の産品が相当加わっている。貝および関連生物の名として』五百四十一品・四百六十七種『が出ている』とあって、同書所収の和名のリストがあり、そこに「角片部」と「片部介」が並んで出ている。何とも言えず、ホネガイっぽい和名だ。

「𢙣鬼貝【「あつきがい」。】」アッキガイ科 Muricidae。保育社の吉良哲明(てつあき)先生の「原色日本貝類図鑑」(私が高校の時に最初に買った本格貝類図鑑で、貝類収集家の間では超有名で「吉良図鑑」の愛称がある。これを手始めに私はに十冊近い貝類図鑑を所持している)によれば(コンマを読点に代えた)、『殻は大形より微小形に及び、塔状乃至紡錘形で、種々の突起を具えた縦張脈』(じゅうちょうろく:螺塔殻頂から下方に向かって縦に張り出した縦肋の内でも、著しく太く、成長に従って段差などが生ずる部分)『を有し』、『前溝』(口の下方の水管部分の前に開いた部分)『を具える。種類甚だ多い大群である』。本科の種群は性、『甚だ貪食で』、『中には牡蠣養殖に大害を与えるものがあ』る。『また』、『体内より浸出す』る『紫』色の『液は』、『昔』、『染料に供されていた』(「貝紫」(かいし)と呼ぶ)。『角質の蓋を具える』とある。我々に馴染みのある種は、アッキガイ科レイシガイ亜科レイシガイ属イボニシThais clavigera ・レイシガイ亜科レイシガイ属レイシReishia bronni ・ チリメンボラ亜科チリメンボラ属アカニシ Rapana venosa 、そしてこの奇体なホネガイであろう。

『「本草」に出づ』「刺螺【和名「はつき貝」。】」この「本草」は時珍の「本草綱目」ではなく、益軒の「大和本草」のこと。私の「大和本草卷之十四 水蟲 介類 刺螺」を見られたい。但し、私はそこで、「刺螺」をホネガイに同定せず、腹足綱前鰓亜綱古腹足目ニシキウズ超科リュウテンサザエ科リュウテン亜科リンボウガイ属Guildfordia に比定同定している。その判断を変える気は今もない。根拠はそちらの私の考証を読まれたい。

『予、曰はく、「はつき」は、其の壳(から)、刺歯(シシ/とがれる は)のごとし。「歯附(はつき)」なるべし。』面白!!! 梅園! ヒット!

「壬巳(みづのえみ)林鐘(りんしよう)四日」天保四年六月四日。グレゴリオ暦七月二十日。]

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