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2022/02/03

毛利梅園「梅園介譜」 水蟲類 川蟹(ドロガニ) / ベンケイガニ或いはクロベンケイガニ

 

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。なお、実際には、以下の画像の左部分には、別種の解説があるのだが、五月蠅いので、今まで同様、文字のない本丁の一部分を切り取り、それをそこに貼りつけて、意図的に消してある。更に、本丁見開きの図群は、描いたものを貼った際にズレが生じて、全体に右に傾斜しているため、回転補正も行った。そのため、多数のマスキングが必要となり、その箇所が見え見えなのは、お許しあれ。最初に言っておくと、この見開きの図は、一種を除いて写生のクレジットがない。今まで言っていないので、注しておくと、江戸時代の博物画で、写生の年月日や、対象個体の入手先まで記すことが多い本書は、特異点である。こうしたクレジットや入手経路まで子細に記すものは、実はそんなに多くないのである。毛利梅園のまめな性格が窺われる事実なのである。

 

Kawagani

 

川蟹【「どろがに」・「たほりがに」・「ひとつきがに」。】

河洲(かはす)の邉(あた)り、崖(がけ)に穴を鑿(うが)ち、潜(ひそ)み住む。人家の園(その)の小流れより、上(のぼ)り來(く)る蟹も「どろがに」と云ふも、此れと異れり。此者、王子、瀧の川なぞの流れにあり、人を、をそる。至つて早し。田港(たみなと)[やぶちゃん注:「港」にルビがあるが、判読困難。推定。]にも生ず。少し、形狀、異なるものあり。

 

[やぶちゃん注:図と異名と解説の一部を見て、真っ先に想起したのは、

短尾下目イワガニ上科イワガニ科アカテガニ属クロベンケイガニ Chiromantes dehaani

であった。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページによれば、甲長四センチメートルほどになり、『河口付近の川岸、河川にも入ることが』あ『る。水田などで摂食、生殖、脱皮』し、分布は『宮城県』『男鹿半島以南。琉球列島。韓国、中国、台湾』とあり、『川の河口域の草』原『など見られる。また』、『川の流れの中、川底の木の葉や』、『岩の周りを素早く泳ぐ』。『アカテガニ』(イワガニ上科ベンケイガニ科アカテガニ属アカテガニ Chiromantes haematocheir )『とくらべると』、『水』辺『に近い場所に多く、また』、『群れている。このカニも主に陸上で暮らし、産卵期にのみ』、『川辺におりてゾエア』(zoea:一般的には十脚目の幼生の発生直後のライフ・ステージに与えられた名で、胸部の付属肢で遊泳し、プランクトン生活をする)『と呼ばれる泳ぐ幼生を水中に放つ。これが子ガニとなって』、『また』、『陸上に上がってくる』とある。『このカニは田の畦に穴を開けて、田の水もれを招くと言うことから、害カニとされる』(ここに出る「タホリガニ」(実際には濁点は「リ」に振られている)は「田掘り蟹」でこれ)。『水が嫌いなのか』、『河口付近の土手の草原などにいる』。『人が踏み込むと』、『どさどさと』、『水の中に逃げ込む』。『食用とはしない模様』で、『ウナギ釣りのエサにするとあるが、確認していない』とある。梅園の解説と幾つもの親和性があるのだが、しかし、そこで、『人家の園(その)の小流れより、上(のぼ)り來(く)る蟹も「どろがに」と云ふも、此れと異れり。』と言って別種の「ドロガニ」がいることを明記している上、この図の個体とは「少し、形狀、異なるものあり。」とも言っていることから、他種が含まれている含みがある。而して、図の鋏をよく見ると、淡い赤系の色が塗られているのが判る。クロベンケイガニの掌部は、こんな色はしていない。されば、少なくとも、この図のそれは、鉗脚の鋏が鮮やかな橙色を呈する、

ベンケイガニ科クロベンケイガニ属ベンケイガニ Orisarma intermedium

の可能性が高くなってくる。ベンケイガニは甲羅の上面も同じく橙色から赤色を呈するのだが、彼らは陸よりも水辺の近くを好む傾向があり、暗く湿った物陰を好み、日中に明るい場所に出ることは殆どなく、昼間は巣穴や物陰に潜んでいるから、干潟や水辺の泥の多い中に逃げ込んだり、そこでじっとしていると、こんな風に黒っぽく見えるであろう。なお、先のアカテガニでは、鉗脚の鋏は鮮紅色で見間違えることはないとは言える。しかも、アカテガニは通常生活では陸を好み、水を嫌う傾向があるため、泥だらけになっていることが殆んどないから、見間違えることはないと考える。

「ひとつきがに」意味不明。鋏をさっと振り立てるから、「人突き蟹」か? 実際には彼らの多くは、日常では、そうする以前に、さっさと逃げるのだが。或いは、さっと振り上げてすたこらさっさで「一突き蟹」か? 「一月蟹」ではあるまい。意味が判らぬから。因みに、ベンケイガニで飼育下では十二年生きたという記事をネットでは見かけた。

「王子、瀧の川」現在の東京都北区滝野川(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。JR王子駅の南西直近で、北部を石神井川が貫流するが、この附近は、古くは、『現在の板橋区加賀付近から谷の底を深くして王子へ続く蛇行した渓流となっていた。この渓谷は「石神井渓谷」「滝野川渓谷」』(☜)『「音無渓谷」などとよばれていた』。『滝野川の町境の北側が石神井川上から一部半円状に外れる部分はかつての流路で、現在「音無さくら緑地公園」』(ここ)『になっており、江戸名所図会『松橋弁財天窟 石神井川』に描かれる江戸の名所だった。現在は川岸は整備されてかつての渓谷の風情はない』とウィキの「石神井川」にあった。同ウィキには歌川広重の「江戸名所百景 王子不動之瀧」や、「江戸名所百景 王子音無川堰棣(えんたい) 世俗大瀧ト唱」(「堰棣」は井堰(いせき)のこと)の浮世絵がある。往時の豊かな自然が偲ばれる。梅園は「水蟲類 津蟹(ツガニ) / モクズガニ」でも、そのモクズガニを、この川で採取している。彼のフィールド・ワークでも、特に好きな場所だったことが判る。

「田港(たみなと)」意味不明。地名ではあるまい。所謂、田圃が広がっていて、且つ、海浜に近い河口近くの船着き場ということであろう。]

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