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2022/02/04

毛利梅園「梅園介譜」 水蟲類 濵蟹 / モクズガニ (附・驚くべき長野県犀川などの遡上個体について)

 

[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。]

 

Aburagani

 

溪蟹

 「あぶらかに」と云ふ。

 

熊谷氏「蟲譜」の條下に出だす、信州佐久郡千曲川の産の蟹、形状、此れと相ひ同じ。其の色、少し異なれり。信州の産と同じき物か。

 

[やぶちゃん注:先に字体を述べておくと、「熊谷」の「谷」は異体字のこれに近い(「グリフウィキ」)。しかし、困ったことに、この「熊谷氏」という本草学者も、その「蟲譜」なる図譜も判らない。識者の御教授を乞うものである。

 さて、本図の蟹であるが、その個体をどこで採取したのかは、珍しく梅園は何も言っていない。しかし、驚くべき上流であるが、『熊谷氏「蟲譜」の條下に出だす、信州佐久郡千曲川の産の蟹』というのは、モクズガニであり、この梅園の描いた個体も、よく見ると、特有の背部の内臓由来の強い凹凸が見えること、歩脚に毛が生えている点から、梅園が好きらしく、何度も描いている、

短尾下目イワガニ科モクズガニ属モクズガニ Eriocheir japonica の驚異的な遡上をした個体

である。則ち、『熊谷氏「蟲譜」の條下に出』るという蟹は日本海産ということになる。「そんな内陸まで遡上するカイ?!」と眉に唾をつける御仁もいるであろうが、実際に、現在でも、長野県に千曲川水系(上流で分岐)の犀川で、モクズガニは捕獲・観察されている。NPO法人「川の自然と文化研究所」(ホーム・ページはここ)の研究収録(ここにリンク・リスト有り)「ニュースレター」(第十号・平成二一(二〇〇九)年十二月二十八日発行)の吉田利男氏の論文「長野県内で見られる大型淡水性甲殻類―モクズガニが語る川の歴史―」PDF・当該モクズガニの、昭和五九(一九八四)年四月に発見された『松本市下岡田の大門沢』川(サイト「川の名前を調べる地図 」で示す)『上流の水田の泥の中で越冬していた甲羅の巾』七センチメートル『にもなる個体』、及び、平成一〇(一九九八)年の夏に『犀川の明科塔の原』(あかしなとうのはら:恐らくはこの附近。グーグル・マップ・データ)『付近で』発見された『甲羅の巾が』十七センチメートル『にもなる』十年以上は生きたであろう大型の個体)の驚くべき写真がある)を読まれたい。そこで吉田氏は、『千曲川や犀川に幾つかの大型ダムが造くられ、魚やモクズガニの遡上は全く見られなくなったはずなのに、今でも犀川にモクズガニがいるのは、何を語るのであろうか? 昭和』五十九『年春の越冬個体の捕獲と、平成』十『年夏の甲羅巾』十七センチメートル『の大型個体の捕獲は、ダム建設以前に遡上した個体が、いまでも上流域に生存していることを物語る証ではないだろうか?』と述べられた後、『改めてダム建設時に魚道の設置が必要なことを、痛感させられる。』と述懐しておられる(なお、ウィキの「モクズガニ」によれば、諏訪湖周辺で採取された個体もあったことが記されてある)。

「溪蟹」「たにがに」と訓じておく。「さはがに」と読むことも可能であるが、図は絶対に「沢蟹」=抱卵亜目短尾下目サワガニ上科サワガニ科サワガニ属サワガニ Geothelphusa dehaani ではあり得ない。

「あぶらかに」「油蟹」で、粗製の菜種油の色は本種の全体的に濃い緑がかった褐色と一致する。但し、本種の甲羅は黄緑色の下地に、黒い縞が混ざった非常に細かな豹柄模様で、視覚的には光るように見えなくもないから、油火(あぶらび)のニュアンスもあるかも知れない。因みに、現在、「アブラガニ」は、日本海・オホーツク海・ベーリング海沿岸域に分布する十脚目卵亜目異尾(ヤドカリ)下目タラバガニ上科タラバガニ科タラバガニ属アブラガニ Paralithodes platypus に標準和名として与えられてはいる。]

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