萩原朔太郞「拾遺詩篇」初出形 正規表現版 芽
芽
いたましき芽は伸びゆけり、
春まだあさき土壤より、
いとけなき草の芽生はうまれいで、
そのこゑごゑはかしましく、
はるる日中(ひなか)の、
大空ふかくかがやけり。
[やぶちゃん注:大正四(一九一五)年六月発行の『街上』に発表。底本の『草稿詩篇「拾遺詩篇」』に載る以下の無題の草稿一種がある。「大空たかく」であろう誤字はママ。
*
○
いたましき芽はうまる、のびゆけり
春まだあさき土の中より壤より
いとけなき草の芽生はのびゆけりうまれいで
その聲聲はおほ空にかけとどろきぬかしましく
はるる日の中の
大空かたくかがやきぬ、ふかくかがやきにけれ、→け□□。きにけれ。
*
後に編者注があり、欄外に、
*
いたましき芽は伸びゆけり
春まだ
*
という二行がある旨の記載がある。]
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