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2022/02/24

萩原朔太郞「拾遺詩篇」初出形 正規表現版 秋日行語

 

 秋日行語

               夢みるひと

 

ちまた、ちまたを步(あゆ)むとも

ちまた、ちまたに散(ち)らばへる

秋(あき)の光(きかり)をいかにせむ

たそがれどきのさしぐめる

我(わ)が愁(うれひ)をばいかにせむ

 

捨身(すてみ)に思(おも)ふ我(わ)が身(み)こそ

びいどろ造(づく)りと成(な)りてまし

うすき女(をんな)の移(うつ)り香(か)も

今朝(けさ)の野分(のわき)に吹(ふ)き散(ち)りて

水(みづ)は凉(すゞ)しく流(なが)れたり

薄荷(はつか)に似(に)たるうす淚(なみだ)

 

[やぶちゃん注:大正二(一九一三)年十月七日附『上毛新聞』に発表された。標題は「しうじつかうご」と読んでおく。「習作集第九巻(愛憐詩篇ノート)」に「小曲集」という草稿があり、その中に、本篇の草稿がある。全部を示す。

   *

 

 小曲集

 

すて身に思ふわが身こそ

びいどろつくりとなりてまし

うすき女の侈り香

けさの野分に吹きちりて

水はすゞしく流れたり

薄荷に似たるうす淚

 

     Ⅱ

 

ちまたちまたを步むとも

ちまたちまたに散らばへる

秋の光をいかにせむ

夕ぐれときのさしぐめる

かゝるうれひをいかにせむ

 

     Ⅲ

夕日も海にかぎろへば

一むら雀つらなめて

空の高きをすぎ行けり

我はうれひにしづみつゝ

遠き坂をば降りて行く

 

     Ⅳ

 

靑くしなへる我が指の

リキュールグラスにふるゝとき

生れつきとは思へども

佗しく見ゆく爪形を

さしもにくしと思ふなり

 

     V

 

        (便なき幼子のうたへる、)

うすらさびしき我が身こそ

利根の河原の石ひろひ

ひとり岸浪をさまよひて

今日も小石を拾ふほど

七つ八つとなりにけり

 

     Ⅵ

 

君はそれとも知らざれど

わが手にもてる草花の

うすくにぢめる淚にも

男ごゝろのやるせなき

うれひの節(ふし)はこもりたり

 

   *

「Ⅰ」に当たる標題はない。その第一連三行目の「侈り香」はママ。「Ⅳ」の四行目「見ゆく」は「見ゆる」の誤字か。「Ⅵ」の三行目の「にぢめる」はママ。

 第一連と「Ⅱ」を反転させて手を入れてある。但し、実はこの本篇の第一連(草稿の「Ⅱ」)だけを見ると、これは以上の草稿に先行する「習作集第八巻(愛憐詩篇ノート)」の巻末目次で「稚子他二篇」とする内の最後の一篇と、読点まで完全に一致する相同詩篇が見出される。その「稚子他二篇」は、『昭和二三(一九四八)年小學館刊 「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」 電子化注始動 / 表紙・背・裏表紙・扉・「遺稿詩集に就て」(編者前書) / 「第一(「愛憐詩篇」時代)」 鳥』の詩篇「鳥」の注の中で全部電子化してあるので参照されたい。

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