萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(そのありさまをみてあれば……)
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1そのありさまをみてあれば
2み空に雪ふり
3木々には光るスダレをかけまた氷の柱をかけ
魚のしづめる
つみびとの額に霰ふりいで
生物のうへに水なかれ
そのしろがねたゝく音を冴え
4み空 を ぢめぢのかぎりをはるかにばるにあきなるものあらはれぬ、
5つみびとの手はあらはれぬ
[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記・歴史的仮名遣の誤り・誤字・削除に至るまで、総てママである。1~5のアラビア数字も朔太郎自身が振ったものである。
編者注があり、『本稿は『蝶を夢む』草稿詩篇の「懺悔」と同じ用紙に書かれている』とある。それは既に『萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 懺悔』の私の注で電子化してあるので参照されたいが、上に引いた編者注は不適切で、詩集「蝶を夢む」の「懺悔」の草稿詩篇は三種が残るが、リンク先のそれは二篇とも無題であり、活字化されていない別稿には題名を「罪人姿」とし、題名を「懺悔」とする草稿詩篇は存在しない。]
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