毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 板屋貝(イタヤ貝) / イタヤガイ(再出)
[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。上方と左側を一部でマスキングした。]
板屋貝【「いたや貝」。
此の者を以つて眞とす。
四種。】
和田氏藏。
数品。九月廿一日
眞写す。
表
裏
[やぶちゃん注:これは、『毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 錦貝(ニシキガイ)・イタヤ貝 / イタヤガイ・ヒオウギ』の所蔵者と同一で、和田氏及び梅園がそれらのコレクションの中から、キャプション中にある通り、『此の者を以つて眞とす』べき『板屋貝』『イタヤ貝』の『数品』から、特に同種と定めるところの『四種』を満を持して選び、『眞写』したという意気込みが伺われるものである。されば、総てを、
斧足綱翼形亜綱イタヤガイ目イタヤガイ上科イタヤガイ科イタヤガイ属イタヤガイ Pecten albicans
に比定しておくこととする。
「九月廿一日」本図譜の流れからみて、順列に大きな前後がなければ、天保五年九月二十一日(一八三四年十月二十三日)となる。
【追記】フェイスブックで掲げたところ、「友達」の西岡純先生より、「貝殻節」の紹介を戴いた。民謡に詳しくないので、知らなかったため、以下に追記する。当該ウィキによれば、『『貝殻節(かいがらぶし)は、鳥取県鳥取市気高町浜村温泉発祥の民謡で、日本海岸で働く漁民の労働歌』。『いつから歌われてきたかはっきりしない。鳥取県気高町(浜村温泉を含む)の海岸一帯に』、『過去には何年か一度に帆立貝(実際にはイタヤガイ)が多量に発生することがよくあった。漁民は「ジョレン」(馬鍬のような漁具)』(鋤簾)『に網をつけた舟で底曳き漁をしたが、この櫓こぎはつらい重労働で、そういう時に歌われたのがこの歌であると言われる』。『現在は「何の因果で 貝殻漕ぎなろうた」で始まる歌詞が、広く定着している』。『踊りの振り付けがいくつか作られて、鳥取県を中心に「鳥取民謡」として盆踊りなどで広く踊られている』。『浜村温泉で室内の宴会の折りなどに芸者またはプロが踊る場合には、両手に小さな皿を持ってカチカチ鳴らして、貝殻を持っているかのように踊ることも行われている』とあった。また、『産經新聞』公式サイト内の記事『うたう歴史ドラマ 夢千代が踊った「貝殻節」』という記事の中でも、本貝漁の対象がイタヤガイであること、この「貝殻節」が、知られたNHKドラマ「夢千代日記」(作・早坂暁/主演・吉永小百合/音楽・武満徹/一九八一年~一九八四年)で、吉永演じる芸者夢千代がお座敷で「貝がら節」踊りを披露したたため、『ドラマの舞台は兵庫県北部の新温泉町にある湯村温泉で、浜村温泉とは離れているものの、発信力は抜群』で、このドラマによって「貝殻節」は一躍、全国的知名度を得たことが書かれてあった(私は当時テレビを持っていなかったが、夏冬の休業中に田舎に戻った際、ところどころを見、その踊りのシーンの記憶が確かにあった)。曲と唄はYouTubeの、例えば「日本大衆文化倉庫」のこちらで聴ける。西岡先生に心から御礼申し上げるものである。]
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