毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 芦貝 / アシガイ
[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。左下方を、一部、マスキングした。]
芦貝【二種。】
「後六〻貝合和哥」
津守冬国
海原や波にゆらるゝ芦貝の
あるかい国と成れるかしこさ
[やぶちゃん注:「二種」とするが、特に色の個体変異が多く、そのために模様がかなり違うように、一見、見られるところの、孰れも、
斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ目シオサザナミガイ/リュウキュウマスオガイ科シオサザナミ属アシガイ Gari maculosa
であろうと思われる。私も嘗ては多彩で、殻表に複雑な刻印を持つ、それらを拾うのに夢中になったことがあった。吉良図鑑によれば(コンマを読点に代えた)、『殻は中位の楕円形で、質かなり厚いが膨らみは弱い。殻頂はやや前方に偏し、後端は截切状』(う~ん、言い得て妙!)『で少し開く。殻表には成長輪脈の外にこれと一致しない斜の彫刻があり』(これがいいんだよなぁ!)、『殻皮は甚だ薄い。帯黄白色の地に放射彩があるもの多く、往々白色又は鮮紅色のものがある』(これが美しいんだよね!)『主歯は各2で強い方は裂頂する。套線彎入は深い。本州以南潮線下。』とある。学名のグーグル画像検索をリンクさせておく。
「後六〻貝合和哥」さんざん出た「六々貝合和歌」である。国立国会図書館デジタルコレクションの原本の当該歌はここ。
*
右十六 芦貝
海原や波にゆらるゝあし貝の 津守国冬
かひある国となれるかしこさ
*
で作者の名と下句の頭を誤っている。梅園はやはりこうした引用では甚だ迂闊に過ぎるのがここでも判る。ちょっと呆れる。津守国冬(つもりのくにふゆ 文永七(一二七〇)年~元応二(一三二〇)年)は鎌倉後期の住吉神社神主で、歌人としてもよく知られた。官位は従四位上・摂津守。]
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