萩原朔太郎 未発表詩篇 筍
筍
おれは籔の中をさがしあるいた
ぴんと光つた靑竹
そこでもこゝでも
ぴんぴん光つた靑竹(ヤブ)の中を
おれはぐんぐんつきやぶつてすゝんだ
そつと立とまると
いちめんに笹の隙間から
天がまつさをに光つて見えた
ふはふはする土壤のにほひ
堀つくり返すと
地面の下がもつくして
わたのやうにふくらんで居た
おれは憔悴しきつて
むらさきいろの顏をしながら
光る筍のあたまを堀つて居た(みつめて居た)
すばらしく遠い*非常に遠い//遠い遠い*地底どん底から
糸のやうな光線がさして居るのを感じながら
そのとき筍がまたひとつ
そのときさびしい竹藪の中で
生長した筍が
すつぽりと帽子をかぶつて立つて居た
[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記は総てママである。「*」「//」は私が附したもので「非常に遠い」と「遠い遠い」が並置残存していることを示す。編者注があり、『本稿前半の下部に、次の七行が書かれている。』として、
*
ひとり樹下に立ち
あほげばしげる枝→木梢の葉うらから
天がまつさをに光つて居たる
木の根のひろごり
犬のやうに
地面の下がもつくりして
わたのやうにふくらんで居た
*
とある。本篇は私が呼ぶところの、所謂、――「竹」詩想――詩篇の一つであり、親和性の強いものは複数あって、私が既に電子化したものでも、さわにある。部分の特定フレーズを変えて私のブログ内に検索をかけると、とてものことに多いので(恐らくは十数篇にはなる)、ここではリンクは張らない。悪しからず。]
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