萩原朔太郎 未発表詩篇 遠き風景
幼馴染の君
幼なき日の 少女に 友だちに
幼なき追懷
遠き風景
――幼なき日の少女子に
しんねんたる柳の樹 ぬれ 立より
道路はしろじろ
うねりて
野はほのぽの
しんしんねんねんたる柳の樹ぬれよりぬれを
うねりてくねりてすぎさるものは自働車の一聯→の白き一聯か
うちふす麥に風あり
けふもさびしき子供子供づれ指さし
遠 見 海に風あり
遠き岬をすぐればこゑさればりくれば
しらたえまさる浪路のうたかた
月の出しほに
道はほのぼの
[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記は総てママである。編者注があり、『本稿には以下がない』とある。]
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