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2022/03/14

萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(菊のにほひをかぎなれし……/(抹消標題は「酒を飮む、」)

 

 酒を飮む、

 

このふくらみある

くちびる

求めて るものは酒である

穴の中に 落ちてゆく瞳

眠れるひとよ

紅を くちびるに酒盃をあてて

菊のにほひをかぎなれし

いまくちびるに菊の酒盃

わかるる日のなみだにぬるる頰をあててよ

君は若くたくましく肥えたる少女

君のかげ かげ日なたなき

わかるるといふになにゆえの酒宴ぞや

 

[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記・誤字・歴史的仮名遣の誤り・削除に至るまで、総てママである。編者注に『「ノート」より』とある。整序すると、

   *

 

 

 

菊のにほひをかぎなれし

いまくちびるに菊の酒盃

なみだにぬるる頰をあててよ

君は若くたくましく肥えたる少女

わかるるといふになにゆえの酒宴ぞや

 

   *

なお、底本の『草稿詩篇「未發表詩篇」』に以下の草稿が載る。

   *

 

 

 

菊のにほひをかぎたまへ

の葉はげしきうれひをつみたまへ、

そのくちびる靑ざめし手をふれて

そのあたたかき頰に頰をよせ

許したまへ□、君の□□

道 

 

   *

個人的には、本篇は「エレナ」詩篇ではないかと思う。「エレナ」の原モデル像である、萩原朔太郎が愛した馬場ナカの結核に罹患する以前の若き日の「頰」のふっくらとした健康的な美しい彼女の写真は、「君は若くたくましく肥えたる少女」と表現するに相応しいと私は感じるからである。釣り師ジュンチャン氏のブログの『日本最長10河川の旅で出会った「日本を代表する人物」その5 利根川 NO2 朔太郎の妹「アイ」と初恋の女「馬場ナカ」』を見られたい。

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