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2022/03/27

萩原朔太郎 未発表詩篇 信仰

 

 信仰

 

わたしがはりつけになるときまへにも、

わたしはくるすきらんとする、

わたしこれはあなたに→にくらしいむやみに話すべきことであるないが

たゞしそれはわたしは信心酒亂である

そして邪いん淫である

ああ信仰のなにものもない

すべて愛より出づるものは毒藥ばかりである草の花よりも危險である

おなごの手にするものはぴすどるの玩具である

わたしはわたしは人をしばつたり人を殺すまへにもしたりするまへに

わたしの戀人を智慧を殺らせさねばならぬ

わたしはにちにちあなたのまへの淚をながし

にちにち信じられないものを信じやうとする、

にちにちわたし一人のために

わたしの兄弟たちは斷食するした、

ああ神さま

ああ、それがまつたくしんじみであるならば

わたしがはりつけになるまへにも

わたしはつぱりとくるすを切つて、

のこらずのあらゆるかくしごとをいつさいの→この秘密を懺悔をするものだ、→するのだ、→したいのだ、してしまひたいのだ。

 

[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。太字は底本では傍点「﹅」。表記は総てママである。

・八行目の「ぴすどる」は「ぴすとる」の誤記

・十一行目「わたしはにちにちあなたのまへの淚をながし」の「まへの」は「まへに」の誤記

・十六行目「しんじみ」は「しんじつ」の誤記

と採って好かろうと思う。それらを訂して削除部分を除去したものを示す。今まで通り、私は底本の校訂本文のようにこれと言って躓かない歴史的仮名遣の誤りを直したり、踊り字を一律正字化する気持ちの悪いことをする気はさらさらないし、勝手に読点を除去したりする暴挙には、およそ組しない人種である。

   *

 

 信仰

 

わたしがはりつけになるまへにも、

わたしはくるすをきらんとする、

これはむやみに話すべきことでないが

たゞしわたしは酒亂であるし

そして邪淫である

ああ信仰のなにものもない

すべて愛より出づるものは毒草の花よりも危險である

おなごの手にするものはぴすとるの玩具である

わたしは人をしばつたり人を殺したりするまへに

わたしの智慧を殺さねばならぬ

にちにちあなたのまへの淚をながし

信じられないものを信じやうとする、

わたし一人のために

わたしの兄弟たちは斷食した、

ああ神さま

それがまつたくしんじみであるならば

わたしがはりつけになるまへにも

さつぱりとくるすを切つて、

あらゆるかくしごとをしてしまひたいのだ。

 

   *]

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