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2022/03/15

萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(わたしどもの風俗は……)

 

 

 

わたしどもの旅は 衣裝は風俗は

はてしなく 長く すばらしく新らしい話題にみちてゐた

かがやかしい髮の毛のために らしく 奇にさへもみえた新奇に見られた、であつた、

ああ、いまは都にちかづいた

風はにほつた

空氣はかがいた[やぶちゃん注:編者は「かがやいた」の脱字とする。]

空はまつさをに光つてゐた

地上には聖

みよ

そうしていまは聖 都にちかづ いた

そうして ああ みよいま都會はわたしどもの前に ひるがへつた 立つてゐた

この日々に旅のおわるの日に

わたしどもは聖都へきたをみた

ああはれずきた靑空のまつした

聖なる大建築の家根が高くひるがへつた、てゐた、

やさしくそうして神聖なる神樣の姿であつた

づかにめやかに鈴をならふりながら鳴らしながら

あわれあれめあれ、 あれをば見しやめしやよ

みくみづひとびとのきこえたささやいた

ゆくゆく鳥のとびすぎるのをみて

わたしは

憂鬱のひるすぎごろ

わたしは手をあげてさしばして

信心深い巡禮の 心から

くだものゝの上の大きな丸いくだものをもぎとつた とつてとり

くだものの しつぽりと喉いつぱいに汁をす りながら つたひこんだ

そうしてわたしどもの巡禮は

そうしてまた巡禮の列に追ひついたのである、

あゝけだしわたしども謹けんであり敬虔にして信心ぶかく

いはんや勇氣にみちあふれきつてゐる、

よるに祈ると言葉もきにも

やさしくそうして崇高神聖なる運命滿月にひざまづいた

   *

編者注があり、『本稿の右欄外に「ぺんぺん草の葉をかみきつた」とある』とし、更に、『本文十一行目「みくみづ」は原文のまま』とある。

 底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記・誤字・削除に至るまで、総てママである。削除部を除去すると、

   *

 

 

 

わたしどもの風俗は

かがやかしい髮の毛のために新奇であつた、

空はまつさをに光つてゐた

この旅のおわるの日に

わたしどもは聖都をみた

ああ靑空のまつした

大建築の家根が高くひるがへつてゐた、

やさしくそうして神聖なる姿であつた

しめやかに鈴をふり鳴らしながら

あわれめしやよと

みくみづひとびとのがささやいた

ゆくゆく鳥のとびすぎるのをみて

憂鬱のひるすぎごろ

わたしは手をさしのばして

樹の上の丸いくだものをもぎとり

喉いつぱいに汁をすひこんだ

そうしてまた巡禮の列に追ひついた

けだしわたしは敬虔にして信心ぶかく

いはんや勇氣にあふれきつてゐる、

よるに祈るときにも

やさしくそうして神聖なる滿月にひざまづいた

 

   *

となる。]

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