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2022/03/28

萩原朔太郎 未発表詩篇 春の夜の會話 / 無題(おれはぽんやりと橋の上に立つて居る、……)

 

 春の夜の會話

      Tとよぶ警官へこの二扁の詩を捧ぐ

 

よなかの三時ごろ、

むかうから步いてくるのは巡査だ、

こつちからやつてくるのは、

よつぱらひの詩人だ、

『こら、おまへはどこへ行く』

『女を買ひにゆきます』

『馬鹿』 

    ○ 

おれはぽんやりと橋の上に立つて居る、

橋の下には生ぬるい水がながれて居る、

あかい角燈をさげた男がやつてきた、

夜中の三時ごろだ、

空にはほんのり月がほんのりと白んで居る、

『おまへはだれだ』

『おれはにんげんだ』

『ばか、おまへの名をきくのだ』

『名ははぎはらだ』

『家はどこだ』

まへばしだ』

『ばか、町の名をきくのだ』

『K町だ』

『ふむ』

おまわりはうしろをむいた、

おれもうしろをむいた、

あいにくふたりのうしろには

春がわらつて居た。

           ――四月六日夜――

 

[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。太字は底本では傍点「﹅」。表記は総てママである。内容と以下に示す草稿から見て、続く無題詩篇は同一のシークエンスで作られた別稿とすべきものであるので、特に二篇を並べた。クレジットがあるが、これは底本の配列からみて、大正四(一九一五)年四月六日夜であろう。とすれば、作品内時制は、その日の未明以前とするべきであろう。なお、詩集「月の吠える」の刊行は大正六年二月である。

「K町」萩原朔太郎の生家は群馬県東群馬郡北曲輪町、後に前橋市北曲輪町となり、現在は千代田町二丁目に生家跡(グーグル・マップ・データ)がある。

 『草稿詩篇「未發表詩篇」』に、『春の夜の會話』『(本篇原稿二種四枚)』として以下の二篇が載る。同じく表記は総てママである。

   *

 

  ある春の夜の會話

     ――Tといふ警官へこの二扁の詩を捧ぐ

 

よなかの三時ごろ

むこうから步いてくるのは巡査だ

こつちからやつてくるのは

よつぱらひの詩人

「こらおまへはどこへ行く」

「女を買ひに行きます」

「馬鹿」

 

 

   

 

おれはぼんやりと橋の上にたつて居る

巡査が橋の下には水がながれて居る

あかい角燈をさげた男がやつてきた

夜半の三時ごろだ

空には月がぼんやりほんのりと白んで居る

「お前はだれだ」

「おれは萩原人間だ」

お前のばか、お前の名をきくのだ」

「名は萩原だ」

「家はどこだ」

「前橋だ」

「ばか、町の名をくのだ」[やぶちゃん注:ママ。「聞」「き」の脱字。]

「K町だ」

「うむ」

おまわりはうしろをむいた

そこでおれもうしろをむいた

あいにうしろにはだれも居なかつた、春が笑つて居た。

 

   *

編者注があり、『草稿二枚目の後半には『蝶を夢む』の「野景」の草稿(題名「晝」)と、拾遺詩篇「朝」の草稿が書かれている。』とある。前者は、

『萩原朔太郞詩集「蝶を夢む」正規表現版 野景』

を見られたい。後者は注が不全で「朝」は内詩篇の一つの標題で、「拾遺詩篇」の中の「玩具箱 ―人形及び動物のいろいろとその生活―」の「朝」と「夕」の前者である。それは、

『萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 拾遺詩篇 玩具箱 ―人形及び動物のいろいろとその生活 / 筑摩版「拾遺詩篇」所収の「玩具箱 ―人形及び動物のいろいろとその生活―」の別稿 附・幻しの三篇組詩「玩具箱」の不完全再現の試み』

で電子化しているので見られたい。

 因みに、事実は、二篇目のように思われ、決定稿の詩人のポーズをした前の詩篇より、こっちの方が遙かにいい。特にコーダが、である。]

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