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2022/04/01

萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(しづかに我は椅子をはなれ、……)

 

 

 

しづかに我は椅子をはなれ、

まつすぐに立上りて我はあゆむ、

いま戶外をながれゆく水の音の、

秋の夜の風の、ええてるのしめやかさをおびて、

月は白み、*窓//扉*はほのかにもひらかれた。

[やぶちゃん注:「*」「//」は私が附した。「窓」と「扉」は並置残存していることを示す。後の草稿でもこの記号の意味は同じ。]

あの、しんにこの荒(すさ)みたる椅子をはなれては、

身をすむべき眠り瑕睡(まどろみ)の里とてもなし

いかなればこよひ夢よりさめて

靑白き懺悔の寺を訪はんとするか

路は遠々み

ゆくゆく月に吠え

森の水車で おび→あやかされ→魔 もおびやかれつつも

狂犬のごとくに さびたつて→なりて→さびて聖牙をならしてかみならして行かねぱならぬ、

聖人の→行路の

いはんや行路を遠みの露をしげみ

よしやわれ夜道に死ぬとても

 

[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記は総てママである。但し、太字は底本では傍点「﹅」。

 なお、本篇には『草稿詩篇「未發表詩篇」』に『本篇原稿二種二枚』としつつ、無題の一種のみがチョイスして示されてある。以下に示す。同じく表記は総てママである。

   *

  

しづかに我は椅子をはなれ

我はまつすぐに立あがり我はしつかり步んだむ、

我は音なき步みを好む

いま戶外をながれるがれゆく水の音のごとくに音の

秋の空氣(エーテル)の、夜のしめやかさをおびて

月は白み、月は床をてらし窓はほのかにもひらかれた、

ああ、しんにこれ人のこのさびしき椅子をはなれては

もの悲しくもランプの影

猫は我はゆくすむべき住家もなしとて眠りの里もなし

いかなれば夢よりさめて

遠遠き いたましき懺悔の

遠遠き僧院の

靑白き*苦行の→未知の殲悔の僧院を//戀人の門→里家を*とはんとするか、

路は遠遠み

ゆくゆく我は狂犬の如く 怖ろしく→すさまじく哀しげにも吠えて行かねばならぬ

よしや我、路に死ぬとて

よしや君かへりはせじ、ゆめにも知らぢあだには知らぢ、

ゆめ、我は今宵僧院に行くまじきぞ、

しづかに祈れ、我が心よ、また明日をも、

ああ寂しくもけれども明日 こそ巡禮

この大いなる椅子を放れて、我は行くべき父母の家もなし

は心 が影は床の上 を步みつゝ ほゝ うすら笑みつゝさびしき影は床の上にさまよひつゝ

 

   *]

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