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2022/03/18

萩原朔太郎 未発表詩篇 都會ノ進行

 

 都會ノ進行

 

鳩の如なる□胸を 張りきつた胸は破裂![やぶちゃん注:□は底本編者の判読不能字。次の行の頭も同じ。漢字の「口」ではないので注意されたい。]

□の足は寅に舞ひあがる[やぶちゃん注:校訂本文は「寅」を「宙」とする。]

足は足は電氣死刑の硝子般に上に舞踏するところの足[やぶちゃん注:校訂本文は「般にを『盤の』とする。]

胸は張りつめる、

胸は△△△鳩のやうに盛りあがつた歡喜の胸[やぶちゃん注:「△△△」は朔太郎自身によるもの。]

手は手は光る

また手指は 白金の指輪アブサントの酒盃にふれ、首は首とて液體空氣の圈中に泳ぎ入る[やぶちゃん注:以下は一行空け。]

 

このひとの聲をみよ

若く美しきこの士官 の聲をみよ

「すゝめ」彼は躍躍し絕叫し萬象をこえて地球の上に立ち

「前へ」

幻惑する華美と墓場の靜寂とに於てその行進は始まつた、

「前へ、第一中隊、第二中隊、第三中隊」

みよあきらかなる

たちまちにして 氷山→指揮刀→聲は

日光は家根をてらした、昔なき軍架の先導に於てみよ步む、銀座一丁目、銀座二丁目、銀座三丁目、銀座四丁目、

その靴にはローラー の底にははゴム底、ローラー、スケートの靴、

京橋、日本橋、神田、本鄕、淺草、上野、

「前へ、第六中隊、第七中隊、第八中隊」

𥒰上の上を水が流れた[やぶちゃん注:「𥒰上」を校訂本文は『鋪道』とする。辻褄の添削で鼻白む。]

みよその丈長き倦怠に於て兵士等は來る、

「竝足」

麹町二丁目、麹町二丁目、麹町三丁目、麹町四丁目、麹町五丁目、麹町六丁目、麹町七丁目、……

たちまち停立した、順序よき進行は

若き士官の憔悴せる

たちまち行進はソ害された

兵士しかも何等の騷ジヨーなしに[やぶちゃん注:「騷ジヨー」は校訂本文では『騷擾』である。]

きはめてしづかに

何物のこの行進の前列を橫斷したのである[やぶちゃん注:「何物の」は校訂本文では「何物か」とする。]

あの この無禮きはまる盲害者

影の 影は灰色の衣裝をきて來た

影は大股に冷笑的にすぎ

は冷笑し、影は消滅した、

光榮ある軍隊の先驅に於て

東京市大行進の前→先 せ××に於て、汝、橫道なる老人よ軍旗の賤辱に於て[やぶちゃん注:「せ××」は朔太郎自身によるもの。]

汝無道なる老人の幻影よ、

停立したる兵士等は不動不拔なる

かく切齒なして怒り、

この士官は焦心した、士官

しかしその勇氣ある號令に於て

障害者の失綜に及べ せる[やぶちゃん注:「失綜」底本編者は「失踪」の誤字とする。]

「大隊、進め、竝足」

蘇生せるところの軍隊は二度新らしき步調をつヾけたまで

麹町七丁目、八丁目、九丁目、十丁目、十一丁、十二丁目[やぶちゃん注:「十一丁」はママ。]

 

[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。編者注があり、『ノートより』とある。

「アブサント」フランス語の「absinthe」だが、これは「アプサント」、正確に音写するなら「アプサァント」であり、古くからフランス・スイス・チェコ・スペインなどを中心にヨーロッパ各国でニガヨモギ(双子葉植物綱キク亜綱キク目キク科キク亜科ヨモギ属ニガヨモギ Artemisia absinthium )・アニス(英語「anise」。双子葉植物綱セリ目セリ科ミツバグサ属アニス Pimpinella anisum )・ウイキョウ(セリ科ウイキョウ属ウイキョウ Foeniculum vulgare )などを中心に、複数のハーブやスパイスを主成分として作られてきたアルコール度の高い(四十~八十九%)薬草系リキュールの一つを指す。元はギリシア語の「ヨモギ」を意味する「アプシンシオン」に由来する。因みに、萩原朔太郎の初期の短歌集の一つ「古今新調 小引幷に十首 大正二(一九一三)年十二月」(同年十二月一日附『上毛新聞』掲載。署名は「夢みるひと」)の「小引く」(小序)にも同一酒である「苦蓬酒(アブサン)」が同じ表記で登場している(「やぶちゃん版萩原朔太郎全歌集 附やぶちゃん注 PDF縦書版」167コマ目を参照)。]

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