萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(さはつねに哀しく……)
○
さはつねに哀しく
なにものを見んとはする
瞳よつね
つねに樹木心のうへにあれ
またもろもろ
つねに人間蓄のうへにあれ
またもろもろの魚鳥のうへにあれ
瞳よ
おくつきの下より生れ
頭なき童女のごとく
いつしんに光空をののぞみて
たえがたき苦痛の底に
あゝ瞳よ、その眠をさませ。
[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。表記・誤字・歴史的仮名遣の誤り・削除に至るまで、総てママである。削除部を除去すると、
*
○
さはつねに哀しく
なにものを見んとはする
瞳よ
つねに樹心のうへにあれ
つねに人蓄のうへにあれ[やぶちゃん注:「蓄」はママ。編者注は『畜』の誤字とする。]
またもろもろの魚鳥のうへにあれ
瞳よ
おくつきの下より生れ
頭なき童女のごとく
いつしんに空をのぞみて
たえがたき苦痛の底に
あゝ瞳よ、その眠をさませ。
*
となる。]
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