筑摩版「萩原朔太郞全集」第一巻『草稿詩篇「月に吠える」』の最後に配された特異な無題草稿一篇
[やぶちゃん注:萩原朔太郎の単行詩集や選集に収録した正規表現版は、既にブログ・カテゴリ「萩原朔太郎」、及び、この「萩原朔太郎Ⅱ」で、その完全電子化を終えているが、実は筑摩版「萩原朔太郞全集」第一巻の『草稿詩篇「月に吠える」』には、一番、最後に、特異な草稿が掲げられている。その後には、編者によって、『本稿は『月に吠える』の「序」および「見知らぬ犬」および『蝶を夢む』の「吠える犬」等と内容上の關連が見られる。』と記されてある。ここで挙げられてあるものは、以下で電子化注済みである。
以下に、その草稿を掲げておく。表記は総てママである。]
○
犬は月に向つて吠える。
月に吠える犬の心は、かなしく、くらく、さむしく、たよりなくふるへる。
月に吠える犬の心は、地面おのれ自身の影におそれる 怪しみ わななく。て吠えるのである。
影は くらい→わびしい地面の上 ながく地上にあやしく漂つてゐる。
影は 月 光 は地上をてらしてゐる、
影は靑白怪しきものゝおそろしき姿をして、くらい地上にふるえてゐる、
犬は おのれの→あやしき 影をおそれる、靑白い月夜に犬が吠へる、そうして遠い
犬は靑白い月に吠へる、夜に遠く吠へる、
[やぶちゃん注:以上で同草稿は終わっている。]
« 萩原朔太郎「笛」(「月に吠える」の詩集本文の末に配された長詩)の草稿詩篇二種(後者に萩原朔太郎自身による自解が附されてある) | トップページ | 萩原朔太郎詩集「宿命」の「散文詩について」の草稿(部分) / 萩原朔太郎の生前の全詩集所収の詩篇の現存草稿詩篇の電子化不全部補填~了 »