萩原朔太郎 未発表詩篇 無題(わたしは凍え……)
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わたしは凍え
かぢかまる
あれこれ雪の山路こゑ
[やぶちゃん注:底本は筑摩版「萩原朔太郞全集」第三巻の「未發表詩篇」の校訂本文の下に示された、当該原稿の原形に基づいて電子化した。歴史的仮名遣の誤りは総てママである。
編者注があり、『本稿の裏には龜の甲上で、象が山を支えている画が描かれている(本卷口繪參照)。』とある。当該口絵からそれをトリミングして以下に示す。なお、文化庁は平面的に写真に撮られたパブリック・ドメインの絵画作品の写真には著作権は発生しないと規定している。反転した本詩篇の稿も薄っすらと確認出来る。反転・回転をさせて原詩篇が見えるようにしたものも下方に配した。
なお、この図は、全体を外周する蛇(ウロボロスの輪にクリソツだ)及び亀・象が、この世界・宇宙を支えているとする、一般には――古代インドの宇宙観を示す図――として非常によく知られるものであるが、実際にはこれを載せるインドの古文献自体が全く実在せず、研究者によれば、現存最古のこれは一八二二年にドイツで出版された「古代インド人の信仰、知識と芸術」という書の挿絵であるという。参照したツイッター上の印刷物の解説画像では、『一五九九年に書かれた』『インドで布教活動を始めたイエズス会の宣教師』の書簡に、『「ある者達は大地が』七『頭の象に支えられ、その象は亀の上に立ち、その亀が何に支えらてるかは知らない」』と揶揄している。「時代遅れの異教徒」への偏見が混じっている』とあり、私も永く信じていたが、そうした多分に軽蔑的な意図ででっち上げられた面白おかしいトンデモ本的な図であるらしい。個人サイトの「宇宙論の歴史」の「インドの亀蛇宇宙図」(当該図と解説も有り)にも参考文献を掲げて、『本図のようなイメージは、インドの伝承に由来するものではない可能性が高いとのことで』あるとある。]
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