譚海 卷之四 湖水の氣雲となり幷富士山雨占候の事
○甲州の人かたりしは、湖水の氣のぼりて雲と成(なる)と覺えたり。其國に湖水多し、時(とき)有(あり)て湖水の上に雲(くも)現ず。苒々(ぜんぜん)にして鮮(あざやか)なる形(かたち)其儘の湖水の中に現(あらは)る也。空に現ずる雲の姿にて湖水の形しらるゝといへり。又わたぼうしほどの雲空に現じて、苒々にふじの山に近づく、富士山の上に雲至る時、黑き色に成(なる)時はまのあたり雨ふる、白ければ雨降(ふら)ずと云。
[やぶちゃん注:「苒々」この場合は、時間がゆっくると経過するさまを言う。]
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