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2022/05/06

畔田翠山「水族志」 コロダヒ

 

(一九)

コロダヒ【紀州】 一名ヒサノ魚【大和本草】カイグレ【勢州阿曾】石鯽【日用襍字母ニ石鯽ヒサト云按時珍食物本草曰石鯽生溪㵎池澤中長五六寸斑㸃身圓厚岳州名勝志曰石門縣東陽水出石鯽魚云云皆珍品廣西名勝志曰馬平縣靈泉多石鯽觀ㇾ此則石飾淡水魚也蓋「ヒサト」同名異物也】

大和本草曰久ダヒ其形如紅鬃魚黑㸃淡色味美ナルヿ如紅鬃魚或斜有紋三四條者大者一二尺按形狀棘鬣ニ似テ濶シ背淡黑色ニ乄黑斑首ニ頭ヨリ脇翅ニ至リ一條背ヨリ尾上ニ至リ一條アリ條俱ニ黑色也腹白色尾ニ岐ナシ其小ニ乄二三寸ノ者ヲ勢州阿曾浦ニテ「トシヲトコ」ト云背首頭淡黑色ニ乄靑ヲ帶斜ニ黑斑二條アリ首ニ又一黒條アリテ脇翅ニ至ル背ニ尾ノ方ヨリ黑㸃アリ背鬣淡黒色ニ乄上鬣ニ黑斑下鬣ニ黑㸃アリ尾黑色黑斑アリ腰下鬣本淡黑色端黑色腹下翅色相同脇翅淡黑色㋑サンセウダヒ 一名サンセイウヲ【泉州堺】ヱゴダヒ【尾州常滑】大サ尺許形狀「コロダヒ」ニ同乄背淡靑色ニ乄淡紅色ヲ混シ金色ヲ帶テ赤ヲ帶淡黑斑上鬣ノ下ニアリ金色ノ下ヨリ腹ニ至ルノ間淡藍色腹白色靑ヲ帶眼上黑下淡靑色頰及眼上唇上黒斑アリテ唇ヨリ眼ニ至リ一道藍色ナリ頭上ヨリ脇翅ニ至リ尾上ニ及ビ腹ヲ堺ヒ黑キ大斑アリ背ノ上鬣ノ頭ノ方ヨリ尾上至リ斜ニ巨キ黑斑アリ尾ヅヽノ下ニ黑斑アリ尾淡黑色ニ黃ヲ帶テ本ニ黑斑アリ腰下鬣黑色ニ乄半ニ淡藍色アリ其本ヨリ腹ニ至リ黑斑アリ背鬣上ハ淡黃ニ乄淡黑斑下ハ黑色ニ乄微淡黃色ヲ帶脇翅上黑色ヲ帶觜細シ大和本草曰一種ヒサノ魚黑色ノヒサノ魚ニハ異リ鮒ノ形ニ似テタテ筋アリ其筋ノ色濃淡相マジレリ口細ク背ニ光色アリ味ヨシ卽此也

○やぶちゃんの書き下し文

ころだひ【紀州】 一名「ひさの魚」【「大和本草」。】・「かいぐれ」【勢州阿曾。】・「石鯽(セキソク)」【「日用襍字母」に、「石鯽」、「ひさ」と云ふ。按ずるに、時珍、『「食物本草」に曰はく、石鯽は溪㵎・池澤の中に生ず。長さ、五、六寸。斑㸃、身、圓厚にして、「岳州名勝志」に曰はく、『石門縣の東陽水、石鯽魚を出づ』云々、『皆、珍品なり』と。「廣西名勝志」に曰はく、『馬平縣の靈泉、石鯽、多し。此れを觀るに、則ち、石飾にして、淡水魚なり』と。蓋し、「ひさ」と同名異物なり。】

「大和本草」に曰はく、『久(ひさ)だひ、其の形、紅鬃魚(たひ)のごとく、黑㸃、多し。淡色。味、美なること、紅鬃魚のごとし。或いは、斜めに、三四條の者、有り。』と。大なる者、一、二尺。按ずるに、形狀、棘鬣(たひ)に似て濶(ひろ)し。背、淡黑色にして、黑斑、首に、頭より脇翅(わきひれ)に至り、一條、背より尾の上に至り、一條、あり。條、俱(とも)に黑色なり。腹、白色。尾に、岐、なし。其の小にして、二、三寸の者を、勢州阿曾浦(あそうら)にて、「としをとこ」と云ふ。背・首・頭、淡黑色にして、靑を帶び、斜めに黑斑、二條あり。首に、又、一黒條ありて、脇翅(わきひれ)に至る。背に尾の方(かた)より、黑㸃あり。背鬣(せびれ)、淡黒色にして、上鬣(うはびれ)に黑斑、下鬣に黑㸃あり。尾、黑色、黑斑あり。腰の下鬣(したびれ)の本(もと)、淡黑色、端(はし)、黑色。腹の下の翅(ひれ)、色、相ひ同じ。脇翅、淡黑色。

㋑さんせうだひ 一名「さんせいうを」【泉州堺。】・「ゑごだひ」【尾州常滑。】大きさ、尺許(ばか)り。形狀、「ころだひ」に同じくして、背、淡靑色にして淡紅色を混じ、金色を帶びて、赤を、帶ぶ。淡黑斑、上鬣の下にあり、金色の下より、腹に至る間(あいだ)、淡藍色。腹、白色、靑を帶ぶ。眼の上、黑、下、淡靑色。頰及び眼の上・唇の上、黒斑ありて、唇より眼に至り、一道、藍色なり。頭上より脇翅に至り、尾上に及び、腹を堺ひとして、黑き大斑あり。背の上鬣の頭の方より、尾の上に至り、斜めに、巨(おほ)き黑斑、あり。尾づつの下(もと)に黑斑あり。尾、淡黑色に黃を帶びて、本(もと)に黑斑あり。腰の下鬣、黑色にして、半ばに淡藍色あり。其の本より、腹に至り、黑斑あり。背鬣の上は、淡黃にして、淡黑斑、下は黑色にして微淡黃色を帶ぶ、脇の翅の上、黑色を帶び、觜(くちばし)、細し。「大和本草」に曰はく、『一種、「ひさの魚」、黑色の「ひさの魚」には異(ことな)り、鮒の形に似て、たて筋あり、其の筋の色、濃淡、相ひまじれり。口、細く、背に光色あり。味、よし』と。卽ち、此れなり。

[やぶちゃん注:畔田のマニアックな細部の色の描写によって、これは百二十%、

スズキ目スズキ亜目マツダイ科マツダイ属マツダイ Lobotes surinamensis

である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」のマツダイのページの画像や(異名に「石鯽」

学名のグーグル画像検索を見られたい。マツダイの生息水深は四十から二百メートルであるが、幼魚は表層を漂い、枯れ葉や木の枝に擬態し、成魚も流木等に寄って漂うことが多い。汽水域に侵入することが、たまにある。小魚・エビ・カニ・イカ等を食べる。日本では成魚はめったに獲れないが、数センチの幼魚が、夏の終わり頃、流れ藻や流木についたまま、海岸にうち寄せられることがある。背鰭と尻鰭の軟条が長いことから、倒すと尾鰭の中ほどか、それよりも後方にまで達し、まるで三基の尾びれがあるように見えることから、英語では、〝Triple-tail〟と呼ばれている。肉質は柔らかいが、美味である。本邦では南日本、太平洋・インド洋・地中海・大西洋の温帯・熱帯域に広く分布する(「デジタルお魚図鑑」の記載に拠った)。

「大和本草に曰わく、……」これは同書の本体部の「大和本草卷之十三 魚之下 棘鬣魚(タヒ) (マダイを始めとする「~ダイ」と呼ぶ多様な種群)」と、附属する図解説の「大和本草諸品圖下 馬ヌス人・赤(アカ)魚・寶藏鯛・久鯛 (チカメキントキ・カサゴ・クロホシフエダイ・イシダイ)」の記載を参照している。しかし、私はそちらでは、「ひさのたひ」「ひさだひ」を一貫してイシダイの幼魚と同定している。それを変更する気持ちは、ここに至っても、ない。但し、或いは、益軒の意識の端にはこのマツダイが含まれていたと考えることは吝かではない。しかし、後者の図はどうみても、マツダイではないと断言する。

「勢州阿曾」ここ(グーグル・マップ・データ。以下同じ)。

「日用襍字母」既注だが、暫くサボっていたので、再掲する。不詳。本書ではしばしば引用書として挙げられる。他の箇所での記載を見るに。本邦で作られた日用(といっても上流階級の)される雑字(「襍」は「雜」の異体字)義集か。

「石鯽」「鯽」は通常、本邦では淡水魚のフナを現わし、畔田は、これを採り上げて漢籍を見てしまった結果、以下の割注の不審な異種の引用を齎すこととなってしまった。

『時珍、『「食物本草」……』不審。李時珍の「本草綱目」には、「石鯽」がただ一回だけ、「鯽魚」(鯉の一種)の状に出現するものの、この文字列は、ない(「漢籍リポジトリ」のここの[104-15a]を参照されたい)。そもそもが「食物本草」は元の李杲(りこう)の編である。それにこの文字列が載るかどうかは、ネットに電子化物が見当たらないので判らない。しかし、以下の引用は、話にならない内陸の河川上流の溪谷に棲息する純粋な淡水魚で、マツダイとは無縁である。但し、現代中国では、調べた限りでは、この「石鯽」は海産魚のスズキ目イサキ科ミゾイサキ属マダラミゾイサキ Pomadasys maculatus を指しているようである。まあ、畔田は最後に『蓋し、「ひさ」と同名異物なり』と言っているのでいいのだが、それに付き合わされるのはちょっと難儀やったな。

「岳州名勝志」不詳。

「石門縣」「東陽水」は不詳だが、現在の石門県なら、湖南省常徳市内のここである。完璧な内陸の山岳地帯である。

「廣西名勝志」明の曹學佺の撰になる広西省の地誌。但し、「中國哲學書電子化計劃」で原本影印を見たが、以下の文字列は見出せなかった。そもそも、この「石飾にして」というのは判読の誤りではないか?

「さんせうだひ」「さんせいうを」この異名、不詳。

「ゑごだひ」平凡社「世界大百科事典」によれば、和歌山では、

スズキ亜目イサキ科コロダイ属コロダイ Diagramma picta

の異名である。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページを参照されたいが、マツダイとは似ても似つかぬ種で、ここに類縁種として挙げた畔田の意図が判らぬ。但し、以下の記載はコロダイっぽくはある。]

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