「南方隨筆」底本正規表現版「俗傳」パート「鹽を好まぬ獸類」
[やぶちゃん注:本論考は「一」が大正三(一九一四)年六月発行の『鄕土硏究』二巻四号に初出され、後の大正一五(一九二六)年五月に岡書院から刊行された単行本「南方隨筆」に収録された。
底本は同書初版本を国立国会図書館デジタルコレクションの原本画像(ここ)で視認して用いた。但し、加工データとしてサイト「私設万葉文庫」にある電子テクスト(底本は平凡社「南方熊楠全集」第二巻(南方閑話・南方随筆・続南方随筆)一九七一年刊で新字新仮名)を使用させて戴くこととした。ここに御礼申し上げる。
本篇は短いので、底本原文そのままに示し、後注で、読みを注した。そのため、本篇は必要性を認めないので、PDF版を成形しないこととした。]
鹽を好まぬ獸類 (鄕硏一卷七三一頁上段參照)
明の富大用の新編古今事類全書雜集卷二に、瑣碎錄を引て、熊少許の鹽を食へば卽ち宛轉して死す、胡孫も亦然りと有る。本邦の熊と猿も鹽を食へば死するものにや、輕々しく試るべきにあらねど、言傳へ有らば報告せられたし。 (大正三年七月鄕硏第二卷第五號)
[やぶちゃん注:「選集」では、添え辞が標題の後の改行下方インデント二行で、『南方「山人外伝史料」参照』『(『郷土研究』一巻二号七三一頁上段)』とある。これは、「續南方隨筆」に載る。国立国会図書館デジタルコレクションの同原本のここ。因みに、塩は一定量を越えれば、如何なる生物に於いても強い毒性を持ち、人でも内臓に致命的に作用して、中毒死する。子供の場合、体重十キログラムでは小さじ一杯五グラムほどの食塩で死に至ることもあると、こちらにあった。
「明の富大用の新編古今事類全書雜集」南宋の祝穆(しゅくぼく)が正編を書き、後に元(「明」は熊楠の誤り)の富大用らが補篇した類書「新編古今事文類聚」であろう。
「瑣碎錄」は北宋の文人温革の撰になる養生書。
「熊少許の」「くま、すこしばかりの」。
「宛轉して」転げまわって。
「胡孫」猿の異名。]
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