「和漢三才圖會」卷第十九「神祭」の内の「鰐口」
[やぶちゃん注:〔→○○〕は、表字・訓読が不完全で私がより良いと思う表字・訓読、或いは送り仮名が全くないのを補填したものを指す。]
わにくち 俗云和尒久和
鰐口
△按鰐口以鐵鑄之形圓扁而半裂如鰐吻懸之社頭従
上垂下布繩【長六七尺】俗名鉦緒而參詣人必先取繩敲其
鐵靣未知其㨿恐是好事者本於鉦鼓而欲令異其音
裂口形偶似鰐首故名之乎
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わにくち 俗に云ふ、「和尒久和〔→知〕(わにくち)」。
鰐口
△按ずるに、鰐口は鐵を以つて之れを鑄る。形、圓(まどか)にして、扁(ひらた)く、半(なかば)は、裂けて、鰐〔の〕吻(くち)のごとし。之れを社頭に懸けて、上より垂(たら)し、布繩を下(おろ)し【長さ、六、七尺。】、俗に「鉦の緒(を)」と名づく。而〔して〕、參詣人、必ず、先(ま)づ、繩を取りて、其の鐵靣(てつめん)を敲(たた)く。未だ其の㨿(よるところ)を知らず。恐らくは、是れ、好事(こうず〔→かうず〕)の者、鉦鼓(しやうこ)に本(もとづき)て、其の音を異ならしめんと欲し、口を裂く形、偶(たまたま)、鰐の首(かしら)に似たり故に、之れを名づくか。
[やぶちゃん注:当該ウィキによれば、『鰐口(わにぐち)とは仏堂の正面軒先に吊り下げられた仏具の一種で』、『神社の社殿で使われることもある。金口』・『金鼓とも呼ばれ』、『「鰐口」の初見は』正応六(一二九三)年の銘を持つ『宮城県柴田郡大河原町にある大高山神社のもの(東京国立博物館所蔵)』。『金属製梵音具の一種で、鋳銅や鋳鉄製のものが多い。鐘鼓を』二つ『合わせた形状で、鈴(すず)を扁平にしたような形をしている。上部に上から吊るすための耳状の取手が』二つ『あり、下側半分の縁に沿って細い開口部がある。金の緒と呼ばれる布施があり、これで鼓面を打』って、『誓願成就を祈念した。鼓面中央は撞座と呼ばれ』、『圏線によって内側から撞座区、内区、外区に区分される』。『現存する最古のものは、長野県松本市宮渕出土の』長保三(一〇〇一)年の銘の『もの』とある(最古のそれは東京国立博物館蔵で画像がある)。]
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