「和漢三才圖會」卷第六十「玉石類伊」の内の「玻瓈(はり)」
[やぶちゃん注:〔→○○〕は、訓読が不完全で私がより良いと思う訓読、或いは送り仮名が全くないのを補填したものを指す。]
はり 頗黎 水玉
玻瓈
ヲ リイ
本綱玻瓈出南番有酒色紫色白色瑩澈與水精相似碾
開有雨㸃花者爲眞藥燒成者有氣眼而輕也玻瓈玉石
之類生土中或云千歲氷所化亦未必然
△按玻※未曽見之疑南蕃硝子乎【今唐人呼硝子稱波宇利伊乃琉※字音】
[やぶちゃん注:二ヶ所の「番」は第一画目がないものだが、「番」の異体字。表字出来ないので「番」に代えた。最後の二ヶ所の「※」は上部が(「王」+「利」)で、下部が「木」である。意味は「玻璃」=「玻瓈」と同じと思う(「東洋文庫」はそのように訳している)が、良安が明らかに違った字として書いているので、かく処理した。]
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はり 頗黎〔はり〕 水玉〔すいぎよく〕
玻瓈
ヲ リイ
「本綱」に、『玻瓈〔はり〕、南番に出づ。酒色・紫色・白色。瑩-澈(すきとほ)り、水精〔すいしやう〕と相ひ似たり。碾(き)り開ひて、雨㸃花〔うてんくわ〕有る者を眞〔しん〕と爲〔な〕す。藥にて燒成〔やきなし〕たる者は、氣眼〔きがん〕有りて、輕〔かろ〕し。玻瓈の玉は石の類〔→なり〕。土中〔どちゆう〕に生ず。或いは云ふ、「千歲〔せんざい〕の氷〔こほり〕の化〔くわ〕せる」と云ふ[やぶちゃん注:訓点にある。]。亦、未だ必〔→ずしも〕然らず。』と。
△按ずるに、玻※〔はり〕は、未だ曽つて之れを見ず。疑ふらくは、南蕃の硝子(ビドロ)か【今、唐人、硝子を呼びて、「波宇利伊〔ハウリイ〕」と稱す。乃い〔→ち〕、「琉※〔はり〕」〔→の〕字の音〔→なり〕。】。
[やぶちゃん注:「玻瓈」水晶を指すが、「本草綱目」では「水精〔すいしやう〕と相ひ似たり」と言っているので、近縁の物にも見えるが、別種なものと認識している。さればこそか、良安は未だ嘗つて見たことがないと断言しており、次の項目が「水精」であることから、別物として、「硝子(ビドロ)」=ビードロ=ガラスではないか? と疑義を示しているのである。
「南番」「南蛮」に同じ。
「雨㸃花」当初は内部に空気が泡状になって散在することを言うと考えたが、それでは次の「氣眼」とダブってしまうので不詳と言わざるを得ない。それとも、丸い泡状ではなくて、雨の雫(💧)型の内部空洞が花のように美しく並んでいるものを言うか? 判らん。
「氣眼」は平凡社「東洋文庫」の訳では、割注で『細かな泡点』と解説している。
「波宇利伊〔ハウリイ〕」「玻瓈」は現代中国語では「ボオ・リイ」。]
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