毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 海蜆(ウミシヽメ) / オキシジミ
[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングし、一部をマスキングした。]
海蜆【「うみしゞめ」。】
[やぶちゃん注:標題で示した通り、底本では、「ウミシヽメ」であるが、電子化本文では「ヾ」と濁音化した。国立国会図書館デジタルコレクションの別人の明るい写本でも同じである。なお、この別写本では、両個体ともに綺麗な輪状線が孰れの個体にも見える。底本のものを、試みにガンマ補正で明度を上げると、上の個体は殆んど見えないが、下の個体には確かに細かな輪状線が見え(是非、やってみて下さい。感動でした)、原本には、確かにそれが描かれていることが判った(【2022年8月18日追加:以下に別本の画像と、本自筆本のγ補正画像を追加した。】)。
当初、斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ目ニッコウガイ超科シオサザナミ科ムラサキガイ亜科イソシジミ属イソシジミ Nuttallia olivacea を考えた。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページによれば、生育域は『北海道南西部以南、九州、朝鮮半島』及び『中国沿岸』で、『潮間帯から水深10メートル』までとある。しかし、グーグル画像検索「イソシジミ」で見ても、本図は全体の形状が孰れも正円に近いこと、何よりも、歯丘があまりにも小さ過ぎるのが気になった。そこで仕切り直して考えた。その結果、
異歯亜綱マルスダレガイ目マルスダレガイ超科マルスダレガイ科オキシジミ亜科オキシジミ属オキシジミ Cyclina sinensis
に落ち着いた。「ぼうずコンニャクの市場魚類図鑑」の同種のページの画像の中央の一枚を見られたい。これなら、本図と大きな不審なく、受け入れられた。グーグル画像検索「オキシジミ」を縦覧したところ、P太郎氏のブログ「贅沢堪能日誌」の「オキシジミ」の記事の、一枚目の画像が、かなり本図と合致するように思われた。ぼうずコンニャク氏の解説によれば、ほぼ円形であるから、貝殻の長さは四・五センチメートルとある。語源の項には、「目八譜」による和名で、『シジミに似て沖にいるという意味合い』だが、『シジミには似ているが、沖合でとれるわけでもなく、語源などは不明』とあった。生息域の項には、『海水生。潮間帯下部から水深20メートルの砂泥地』に棲み、『房総半島から九州。朝鮮半島、中国大陸南岸』とあって、梅園が入手し得る。吉良図鑑には、『食用となるも美味ではない』とある。ぼうずコンニャク氏も『アサリのようにあまく強いうま味ではなく、好き嫌いの出る味』とされ、『貝殻は薄いが硬い。軟体は赤みを帯びている。やや水分が多く、少し苦みがあ』る上に、『泥質のところにいるためか、泥、砂などを噛んでいることが多い』とあった。]
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