「和漢三才圖會」卷第二十四「百工具」の内の「錑(もぢり)」
[やぶちゃん注:〔○○〕や〔→○○〕は、表字・訓読が不完全で私がより良いと思う表字・訓読、或いは送り仮名が全くないのを補填したものを指す。]
[やぶちゃん注:下方の螺旋のあるスクリュー釘附きの図の上にキャプションで「南蠻錑」。]
もじり 錑
錑【音戾】 【和名毛遲。】
ルイ
△按錑大鑚也柄橫於頭如丁字樣先以三稜錐次敲入
之以柄紾捩
南蛮鍍 捻如眞糕餠形功倍於常
*
もぢり 「錑」
錑【音戾】 【和名、「毛遲〔(もぢ)〕」。】
ルイ
△按ずるに、錑は大〔きなる〕鑚〔(きり)〕なり。柄は頭〔(かしら)〕に橫〔→にあり〕、「丁」字樣〔ちやうじやう〕のごとく、先〔(ま)づ〕三稜錐〔さんりようきり〕を以つてし、次いで、之れを敲〔(たた)〕き入〔→れ〕、柄を以て、紾-捩(もぢ)る。
南蛮鍍〔(なんばんもぢり)〕 捻〔(ねぢ)〕ること、眞糕餠〔(しんこもち)〕の形のごとし。功、常に倍す。
[やぶちゃん注:「錑」は「錑錐(もぢりぎり(もじりぎり))」のこと。現行では初めから先が螺旋状を呈し、丁字形(ちょうじがた)の柄を回しながら穴を開ける錐を言う。但し、図の右手上方の物は螺子山が視認出来ないので通常の釘の太いものが附いているようである。特に螺旋の捩子山(ねじやま)のあるものを、ここでは「南蠻錑」と呼んで区別していることが判る。謂わば、ワインのコルク開けをごくごく小型にしたような、打ち込んだら、反対方向に回さない限り抜けない固定具である。他に割注にあるように、「もぢ(もじ)」とも呼んだ。
「眞糕餠」「志んこ餅」「新粉餅」「糝粉餅」などと表記し、上新粉(「うるち米」を引いた粉)を用いて作られる餅菓子の一つ。「もち米」作られる「餅」と比べ、弾力があり、歯切れがよく、すぐ固くなりにくいのを特徴とする。主に新潟県などで作られ、食べられており、新潟県の郷土菓子・地方銘菓として知られる(サイト「日本の食べ物用語辞典」のこちらに拠った)。]
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