毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 雲貝 / 同定比定不能
[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここからトリミングした。データとクレジットは左丁の左下に、「以上勢州二見浦産 所藏」「丙申年二月大生氏勢刕大神宮拜詣帰𨊫爲土産予送之眞寫」とある。最後の「砑螺・ツメタ貝」で考証・訓読して注をするが(「𨊫」は中文サイトで「乃」の異体字とあるのを漸く見つけた)、謂うところは、「この見開きに描いた個体群は、総て、伊勢の二見ヶ浦産で、現在は私自身の所蔵になるものであるが、もとは私の知人の大生氏(読みは現代仮名遣で「おおばえ」・「おおう」・「おおぶ」・「おおしょう」などがある)が、伊勢神宮を参詣して帰るに際し、土産として私に送って呉れたもので、それを写生した。」ということのようである。]
雲貝(くもがひ)
[やぶちゃん注:半月ばかりもペンディングしてしまったのだが、こ奴のためである。海綿動物門六放海綿綱 Hexactinellida(ガラス海綿類)の骨格かと思ったが、乾燥標本では、このような群体を示すことはないと思われた。容易に想起されるのは、伊勢土産であることから、サンゴの残骸らしきものが土産物として売られていたことは十分に考えられることから、刺胞動物門花虫綱 Anthozoa の珊瑚様の何らかの種の群体ではあるものの、しかし、どうもピンとくるものが思い浮かばない。実は私の『博物学古記録翻刻訳注 ■17 橘崑崙「北越奇談」の「卷之三」に現われたる珊瑚及び擬珊瑚状生物』の「図版Ⅴ」のこれが、
やや似ているように思われるのだが、そちらで注したように、海綿動物門石灰海綿綱 Calcarea に属する種群を措定してみたものの、彼らは、『炭酸カルシウムから成る方解石やアラレ石で出来た骨針を持ち、死後も他の海綿と異なり硬い』ものの、『同綱の種群は群体を造っても小さく、高さも直径も十センチメートルほどの淡褐色で、ここに示されたような大きさにはならない。お手上げである。図を最初に見た時には、容易に同定出来ると思ったのだが。識者の御教授を乞う』とした。或いは、本図の方が、海綿動物門石灰海綿綱 Calcarea に属する種群の一種の骨格とするには、相応しいのかも知れぬが、やはり、ネット上の骨格標本を見ても、今イチなのであった。二つともに、再度、識者の御教授を乞うものである。なお、梅園のそれは、或いは海産生物ではなく、何らかの石、鉱物が変成を受けたものではなかろうか? という疑問も起ったことを附記しておく。]
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