鈴木正三「因果物語」(片仮名本(義雲・雲歩撰)底本・饗庭篁村校訂版) 中卷「十五 蛇に呑まれて蘇生する者の事」
[やぶちゃん注:底本は、所持する明治四四(一九一一)年冨山房刊の「名著文庫」の「巻四十四」の、饗庭篁村校訂になる「因果物語」(平仮名本底本であるが、仮名は平仮名表記となっている)を使用した。なお、私の底本は劣化がひどく、しかも総ルビが禍いして、OCRによる読み込みが困難なため、タイピングになるので、時間がかかることを断っておく。なお、所持する一九八九年刊岩波文庫の高田衛編「江戸怪談集(中)」には、本篇は収録されている。
なお、他に私の所持品と全く同じものが、国立国会図書館デジタルコレクションのこちらにあり、また、「愛知芸術文化センター愛知県図書館」公式サイト内の「貴重和本ライブラリー」のこちらで、初版板本(一括PDF)が視認出来る。後者は読みなどの不審箇所を校合する。
本文は饗庭篁村の解題(ルビ無し)を除き、総ルビであるが、難読と判断したもの、読みが振れるもののみに限った。]
十五 蛇に呑まれて蘇生する者の事
江州にて、さる者、木を切りに行く。九つになる子、鎌を持ちて行く。
此の子を、蝮(うはばみ)、呑みて、腹、ふとく成りて行くを見て、父、追付(おひつ)け、鉞斧(まさかり)を蝮の胴體へ打込(うちこ)みければ、其儘、吐き出(いだ)しけり。其砌(そのみぎり)は、頭(かしら)の毛、拔けたりと云へども、頓(やが)て、本(もと)の如く、生(お)ひたりとなり。
其の子廿七の時、受三(じゆさん)、見て語るなり。
[やぶちゃん注:「受三」不詳。]
〇濃州(じようしう)岩村(いはむら)にて、さる者、蝮(うはばみ)に呑まれたり。小脇指(こわきざし)にて、腹を切り破り、出(いだ)したり。
此の男を、鈴木權兵衞(ごんびやうゑ)、
「見たり。」
と語るなり。
[やぶちゃん注:「濃州岩村」岐阜県恵那市岩村町(いわむらちょう)。]
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