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2022/10/04

鈴木正三「因果物語」(片仮名本(義雲・雲歩撰)底本・饗庭篁村校訂版) 上卷「十二 塜燒くる事 附 塜より火出づる事」

 

[やぶちゃん注:底本は、所持する明治四四(一九一一)年冨山房刊の「名著文庫」の「巻四十四」の、饗庭篁村校訂になる「因果物語」(平仮名本底本であるが、仮名は平仮名表記となっている)を使用した。なお、私の底本は劣化がひどく、しかも総ルビが禍いして、OCRによる読み込みが困難なため、タイピングになるので、時間がかかることを断っておく。但し、既に述べたように、所持する一九八九年刊岩波文庫の高田衛編「江戸怪談集(中)」に抜粋版で部分的に載っているので、今回から、その本文をOCRで取り込み、加工データとして一部で使用させて戴く。そちらにある(底本は東洋文庫岩崎文庫本)挿絵もその都度、引用元として示す。注も参考にする。

 なお、他に私の所持品と全く同じものが、国立国会図書館デジタルコレクションのこちらにあり、また、「愛知芸術文化センター愛知県図書館」公式サイト内の「貴重和本ライブラリー」のこちらで、初版板本(一括PDF)が視認出来る。後者は読みなどの不審箇所を校合する。

 本文は饗庭篁村の解題(ルビ無し)を除き、総ルビであるが、難読と判断したもの、読みが振れるもののみに限った。踊り字「〱」「ぐ」は正字化した。適宜、オリジナルに注を附す。]

 

   十二 塜燒くる事

      塜より火出づる事

 東三河(ひがしみかは)、一の宮の近所、上野村(うへのむら)、兵右衞五郞(ひやうゑごらう)と云ふ鍛冶(かぢ)の女房、死して七日目より、塜に、天目(てんもく)程なる穴、出來(いでき)て、鍛冶のほどの火の如く、燒けゝり。

 七月盆過ぎに、我(わが)處の全才(ぜんさい)、行きて見るに、火、强く出づる間(あひだ)、若竹(わかたけ)を指し入れて置くに、

「ぷちぷち」

と燒けて、燃え來(きた)るなり。

 引導師は、長山(ながやま)の正眼院(しやうげんゐん)なり。後に牛雪和尙、治め給ふなり。兵右衞五郞も、三年忌に死しけり。

 寬永五年の事なり。

[やぶちゃん注:「東三河、一の宮の近所、上野村(うへのむら)」愛知県江南市松竹町上野(かみの)であろう。一宮市の東北直近である。

「天目」天目茶碗。一般に口径は十二センチメートル前後。

「鍛冶のほど」鍛冶屋が用いる鞴(ふいご)から噴き出すところの、それ程の。天然ガスの噴出に酷似してはいる。

「全才」「江戸怪談集(中)」に『人名。著者に弟子。』とある。

「長山の正眼院」愛知県豊川市上長山町南宝地にある曹洞宗本宮山松源院。「江戸怪談集(中)」注では『一宮市』とするが、誤りであろう。

「牛雪和尙」既出既注

「寬永五年」一六三四年。]

 

○大坂の北、野江(のえ)村と云ふに、仁兵衞(にひやうゑ)と云ふ者、寬永十一年七月廿三日に、五十歲にて死す。一向宗なり。

 彼が塜より、蹴鞠(けまり)の如くなる火の、丸(まる)がし出で、二、三度、上がり、其の後(のち)、細路(ほそみち)あるを、二、三尺程、高く、

「つるつる」

と上(あが)り、我(わが)宿の方(かた)へ來(きた)る。

 路次(ろじ)の田畠(たはた)を、殘さず廻(まは)りて、田畠の上にては、大(おほ)きになつて、細々(ほそぼそ)と散りて、落ちけり。

 其落つる有り樣は、血の如し。

 亦、本(もと)の火になつては、田畠を廻り窮めて、我(わが)家の棟を、

「ころころ」

と、ころびて、又、塜へ返る。

 卅日ばかり、每夜、四つ時に來たるなり。

 野江中(ちう)の者、皆々、見たり。

 庄屋作兵衞子供・兄弟、共に見るなり。兄は十七、八なるが、是を見、四、五日、煩(わづら)ふなり。

[やぶちゃん注:「野江村」大阪府大阪市城東区野江附近。

「寬永十一年」一六三四年。

「丸(まる)がし出で」丸くなって飛び出だし。

「我(わが)宿」故仁兵衞の家。

「四つ時」定時法で午後十時頃。不定時法だと、命日直後ならば十時過ぎ。]

 

○江州みのうらと云ふ處に、本願寺門徒、死す。彼(かれ)が塜より、火の丸(まる)がせ、鞠(まり)の程に成り、飛(とび)出づる事、夜々(よゝ)なり。

 或る夜、人、數多(あまた)居(ゐ)たる處へ、飛び來(きた)る。

 是を、

「取らん。」

と追廻(おひまは)れども、取留(おりと)められず。

 又、餘(よ)の家に飛び入りければ、家の中、燒ける如くなり。家主も、妻子を伴れて、二、三町、遠き寺へ、逃行(にげゆ)くなり。

 旦那、坊主、用ひずして、是を弔ふ事、なし。

 後には、親類中(ちう)の家へ飛び行くなり。

 宗庵(そうあん)、慥(たしか)に見て、語るなり。

[やぶちゃん注:「江州みのうら」滋賀県米原市箕浦

「火の丸(まる)がせ」名詞化しているようである。火を丸くした(ようなもの)で。

「旦那、坊主、用ひずして」この亡くなった本願寺門徒の主家の総領の主人は、浄土真宗を信じないばかりか、押しなべて、仏僧を信用していなかったのである。神道のファンダメンタリストであったか。にしても、旦那には、その火の玉は姿を現わさなかったらしいな。その辺が、嘘っぽいぜ。

「宗庵」不詳。]

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