「續南方隨筆」正規表現版オリジナル注附 「話俗隨筆」パート 梔子花の兒戯 / 爪切る事 / 感冒
[やぶちゃん注:「續南方隨筆」は大正一五(一九二六)年十一月に岡書院から刊行された。
以下の底本は国立国会図書館デジタルコレクションの原本画像を視認した。今回の分はここと、ここ。但し、加工データとして、サイト「私設万葉文庫」にある、電子テクスト(底本は平凡社「南方熊楠全集」第二巻(南方閑話・南方随筆・続南方随筆)一九七一年刊)を使用させて戴くこととした。ここに御礼申し上げる。疑問箇所は所持する平凡社「南方熊楠選集4」の「続南方随筆」(一九八四年刊・新字新仮名)で校合した。
注は文中及び各段落末に配した。彼の読点欠や、句点なしの読点連続には、流石に生理的に耐え切れなくなってきたので、向後、「選集」を参考に、段落・改行を追加し、一部、《 》で推定の歴史的仮名遣の読みを添え(丸括弧分は熊楠が振ったもの)、句読点や記号を私が勝手に変更したり、入れたりする。
なお、以下三篇は孰れも短いので、セットで示す。]
梔子花の兒戯 (同 前)
紀州田邊で、小兒、梔子(くちなし)の花を、蕚《がく》、及び、心《しん》と、引放《ひきはな》ち、花の中孔《なかあな》に、細き箸を串(つらぬ)き、口にて吹けば、快く廻るを、見て樂しむ。因《より》て、此花を「水車」と呼ぶ。花瓣《はなびら》の排列、捻旋《ねんせん》して、恰《あたか》も人造風車の如く、風に逢へば、忽ち、廻る。
[やぶちゃん注:「梔子花の兒戯」リンドウ目アカネ科サンタンカ(山丹花)亜科クチナシ連クチナシ属クチナシGardenia jasminoides 。花期は六 ~七月で、葉腋から、短い柄を出して、一つずつ、強く印象的な芳香のある花を咲かせる。
「同前」は前の記事の正本文部と同じく大正二(一九一三)年五月『民俗』第一年第一報所収であることを言う。以下の二篇も同じ。]
爪 切 る 事 (同 前)
同地の俗傳に、夜、爪を切れば、父母の死に逢ひ得ず。之を免れんとならば、七草の日、爪切るべし。然る後、夜切るも、此難なし、と。予、幼時、和歌山の俗傳に、爪切て燒けば、本人、發狂す、と云へり。三十餘年前の事也。
[やぶちゃん注:この前段は既に、『「南方隨筆」底本正規表現版「紀州俗傳」パート 「二」』に出ており、注もしてある(後段の内容にも言及して注を附した)。このパート「二」の初出は大正二(一九一三)年五月『郷土研究』第一巻第三号だから、掟破りの同時の二重投稿である。]
感 冒 (同 前)
又、田邊の俗傳に、子より親に傳はれる感冒、重く、親より子に移れるは輕し、と。
[やぶちゃん注:同前で『「南方隨筆」底本正規表現版「紀州俗傳」パート 「二」』に出ており、注もしてある。全くの二重投稿。]
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