曲亭馬琴「兎園小説拾遺」 第二 「文政十三年庚寅春閏三月廿日、伊勢内宮御山荒祭宮以下炎上の節、傳奏方雜掌達書」
[やぶちゃん注:「兎園小説拾遺」は曲亭馬琴編の「兎園小説」・「兎園小説外集」・「兎園小説別集」・「兎園小説余禄」に続き、「兎園会」が断絶した後、馬琴が一人で編集し、主に馬琴の旧稿を含めた論考を収めた「兎園小説」的な考証随筆である。昨年二〇二一年八月六日に「兎園小説」の電子化注を始めたが、遂にその最後の一冊に突入した。私としては、今年中にこの「兎園小説」電子化注プロジェクトを終らせたいと考えている。
底本は、国立国会図書館デジタルコレクションの大正二(一九一三)年国書刊行会編刊の「新燕石十種 第四」のこちら(右ページ下段五行目)から載る正字正仮名版を用いる。
本文は吉川弘文館日本随筆大成第二期第四巻に所収する同書のものをOCRで読み取り、加工データとして使用させて戴く(結果して校合することとなる。異同があるが、必要と考えたもの以外は注さない)。
馬琴の語る本文部分の句読点は自由に変更・追加し、記号も挿入し、一部に《 》で推定で歴史的仮名遣の読みを附した。一ヶ所、不審な箇所を小文字にした。
ひとつ前の「文政十三寅の閏三月十九日伊勢御境内出火」の追記記事。]
○文政十三年庚寅春閏三月廿日、
伊勢内宮御山荒祭宮以下、
炎上の節、傳奏方雜掌達書
去る廿日、内宮別宮荒祭宮以下、炎上の由、依ㇾ之、從二今廿六日一至二來《きたる》朔日一、五日の間、廢朝、被ㇾ止。
帝奏、警蹕、候。仙洞樣、五ケ日、被ㇾ止二物音一候。此段、爲二御心得一可二申入一日、兩傳奏え、申付候。以上。
閏三月廿六日 兩 傳 奏 雜 掌
按ずるに、内宮炎上、萬治元年十二月廿九日、末社、囘祿、畢《をはんぬ》。明年、遷宮。天和元年十二月十三日、自二内宮寶殿一出火炎上。文政十三年閏三月十九日、内宮御山、炎上。荒祭宮・古宮、及、八十末社、囘祿、畢。新御宮、無異。
著 作 堂 追 記
是より下《くだり》、集《あつめ》る所、世に
はゞかるべき事も、まじれり。みだりに人に
貸《かし》て見することを、ゆるさず。予が
いとまなき身の、かく迄にあつめたる者なれ
ば、折々、枕の友となすのみ。子供・初孫等、
此心もて、帳中の祕となすべきもの也。
[やぶちゃん注:「文政十三年」一八三〇年。
「萬治元年十二月廿九日」既に一六五九年一月。
「天和元年十二月十三日」既に一六八二年一月。]
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