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2022/12/19

大和怪異記 卷之七 第十九 怨㚑蛙となりてあだをかへす事 / 大和怪異記~全電子化注完遂

 

[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここと、ここ。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。

 正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。

 本篇を以って「大和怪異記」は終わっている。]

 

 第十九 怨㚑(をん《りやう》)蛙(かはづ)となりてあだをかへす事

 ある侍、若黨をつかひにつかはしかへりけるとき、

「又、下女をもつて、いづれの所に、ゆくべし。」

といふに、若黨、

「遠方にゆき、やうやう、今、かへりしに、をし[やぶちゃん注:ママ。]かへして、つかはさるゝ事よ。」

と、つぶやきしを、かの下女、すぐに、をく[やぶちゃん注:ママ。]に入(いり)、

「かやうに申《まをし》て、へんじだに、いたさず。」

と、主人につげければ、

「にくき事かな。」

とて、かの若黨を、手うちにす。

 翌年、その日にあたりけるに、若黨を、さゝへて、ころさせし下女、主人のいとけなき子につきて、にはを、めぐるとて、蛙をつえにて、うちしかば、かはづ、いばりを、下女がくちに、しかけける。

 そのあぢはひ、はなはだ、にがければ、したをあらい[やぶちゃん注:ママ。]、こそげしかども、にがきあぢはひ、うせず。

 ひたもの、こそげしかば、した、やぶれ、ち、いで、みるうちに、大《おほい》に、はれ、つゐに、三、四日、わづらひて、死しけるぞ、ふしぎなれ。

 そのころの人、

「くだんのかはづは、わかとうが、ばけてきたれるものなるべし。」

と沙汰しける。「異事記」

   都合百六箇條

 

 

    洛陽書林柳枝軒板行

 

 

  七册

[やぶちゃん注:原拠とする「異事記」は不詳。「近世民間異聞怪談集成」の解題で土屋氏も、本書を『該当する資料名が不明なもの』の一つに入れておられる。最後の奥付の内、最後の「七册」という冊数表記は、原本を後の蔵本者が和装で外装を張り直した際の、最終丁を剥がした裏側にある(底本のこの画像)。但し、これは、字の向きと(印刷では逆さまということになりおかしい)、墨色から、旧蔵者が自筆で記したものと思われる。印字ではないが、底本画像がそこを見せるために別撮りしているので、特異的に加えた。

「いばり」「溲・尿」。小便。ここで言っている「かはづ」が「ヒキガエル」(脊索動物門脊椎動物亜門両生綱無尾目アマガエル上科ヒキガエル科 Bufonidae に属するヒキガエル類。本邦固有種は三種棲息する。「和漢三才圖會卷第五十四 濕生類 蟾蜍(ひきがへる)」の私の注を参照)であったとすれば、それは小便ではない。彼を刺激すると、後頭部にある大きな耳腺から強力な毒液を出し、また、皮膚、特に背面にある多くの疣(イボ)からも、牛乳のような白い有毒の粘液を分泌する。この主成分であるブフォトキシン(bufotoxin)は激しい薬理作用を持つ強心配糖体の一種で、主として心筋(その収縮)や、迷走神経中枢に作用する。ヒトの場合に亡くなったケースは聴かないが、眼に入れば、失明の危険もある強毒であり、猫や犬の場合は噛みついたりして、死亡した例がある。特にこの下女の場合、舌にこびりついたそれを、箆でこそいだ際に舌を傷つけ、血液中にそれが侵入したと考えると、重症化の虞れが考えられ、もともと心臓に基礎疾患があったり、強いアレルギー体質であったとすれば、死に至ったとしても、強ち、おかしくはないように思われる。]

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