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2022/12/15

大和怪異記 卷之六 第十三 鼡をたすけて金をうる事

 

[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここと、ここ。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。

 正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。]

 

 第十三 鼡(ねずみ)をたすけて金(かね)をうる事

 寬文六年、江戶、新兩替町(しんりやうがいてう[やぶちゃん注:ママ。])四丁目、香具(かうぐ)や九郞左衞門やどに、鼡、あれけるを、「ますをとし」にて、とり、家來に、

「ころせ。」

と、いひしを、ふびんに思ひ、たすけし其夜のゆめに、ちご、一人、來り、

「よひには、いのち御たすけ有《あり》がたふ候。さけを、もち參れり。ひとつ、參れ。」

と、すゝめ、金魚(きんぎよ)を、さかなに出《いだ》しけるを、食する、と、思ひ、ゆめ、さめて、何やらん、くちに、ものゝありしを、はき出《いだ》しみれば、金一步《きんいちぶ》なり。きゐ[やぶちゃん注:ママ。]の思ひをなして、それより、

「九郞左衞門が家には、鼡をころさず。」

といふ。

[やぶちゃん注:原拠「犬著聞集」。「新著聞集」には載らないようである。鼠は大黒天の使者とされるから腑に落ちる話柄ではある。大黒天は、元はインドの「マハーカーラ」(漢音写「摩訶迦羅」など)は、ヒンドゥー教の「シヴァ神」の異名であり、時間や闇黒を司る神であったが、中国に仏教が伝来すると、仏法の守護神や厨房の神となり、本邦に入ると、さらに「大国主命」と習合して福神となり、近世以降になると、福徳・豊穣及び財宝を人々に付与してくれる福神として「七福神」に数えられるように、甚だ信仰が増した。「大黒」の「黒」は陰陽五行説で北を意味し、北は十二支では「子(ね)」に相当することから、大黒天の神使は鼠とされ、また、日本神話では大国主命が「根の国」から無事に帰還する説話の中で鼠に救われいることにも由来する。

「寬文六年」一六六六年。徳川家綱の治世。

「江戶、新兩替町」現在の中央区銀座の古名。中央区銀座四丁目はここ(グーグル・マップ・データ)。

「香具や」香具(聞き香で用いる道具。但し、古くは薬売りを本業とした)を売ることを生業とする者。参考までに、小学館「日本国語大辞典」には、『香具を売るかたわら、ひそかに男色を売るものもあった』ともある。

「あれける」「荒れける」。

「ますをとし」「枡(升)落とし」。鼠捕りの仕掛け。伏せた枡の一画を棒で支え、下に餌を置き、餌を狙った鼠が触れると、枡が落ちて閉じ込められるようにしたもの。

『「ころせ。」と、いひしを、ふびんに思ひ、たすけし』ここは、主人は一度は「殺せ」と下男に命じたものの、即座に思い返して(大黒の使者であることを念頭においたのであろう)、助けたのである。

「さけ」酒。

「金魚」条鰭綱骨鰾上目コイ目コイ科コイ亜科フナ属キンギョ Carassius auratus は、御覧の通り、食用にするフナ類の突然変異種(約千七百年前に中国で発見された)であるヒブナ(緋鮒)を改良したものであるから、食用になる。実際、江戸時代には金魚料理があったようである。こちらの水産学者で金魚研究の第一人者である松井佳一氏の「日本の金魚」の紹介記事に、『日本に来たのは』ヒブナで、一五〇二『年(室町末期)』頃、『今の大阪堺へ明人によって持ち込まれたらしい。ワキン』(和金:ヒブナの変異固定種)『の大型のものは食用種として飼育され、美味であったとか』とある。但し、ここは「金魚」で金(かね)に繋がるように設定されたもので、金魚は江戸時代には金魚の哀願が爆発的流行を起こし、驚くべき高値で売買されたから、一般に金魚が盛んに食われたというわけではあるまい。

「さかな」「肴」。]

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