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2022/12/09

大和怪異記 卷之六 目録・第一 瀨川主水かたきうちの事

 

[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここから(挿絵が途中に入るが、これは本話のものではない)。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。

 正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。

 但し、目録では総ての読みをそのままに示した。歴史的仮名遣の誤りは総てママである。標題の頭の「十一」以下の数字は底本では半角。]

 

やまと怪異記六

一 瀨川主水(せははもんど)かたきうちの事

二 稻荷(いなり)の神酒(みき)をぬすむ老人(らうじん)が事

三 病中(びやうちう)にたましゐ寺(てら)にまいる事

四 幽㚑(ゆうれい)子(こ)をはごくむ事

五 狼(おほかみ)人(ひと)にばけて子(こ)をもちし事

六 幽㚑(ゆうれい)來(きた)りて妻(さい)をいざなふ事

七 殺生(せるしやう)のむくゐにて目鼻(めはな)なき病(やまひ)をうくる事

八 鳳來寺(ほうらいじ)の鬼(をに)の事

九 紀州幡川山(きしうはたかはやま)禪林寺(ぜんりんじ)由來(ゆらい)の事

十 へびのしうしんうづらをころす事

十一 かねにしうしんのこす僧が事

十二 きつねばけ損(そん)じてころさるゝ事

十三 ねづみをたすけて金(かね)を得(う)る事

十四 鳫風呂(がんぶろ)の事

十五 むさうを得(ゑ)て富(とめ)る事

十六 うかひ死期(しご)に惡相(あくさう)をあらはす事

十七 火車(ひのくるま)にのる事

十八 臨終(りんじう)にねこ來(きた)る事

十九 洪水(こうずい)に大(だい)じやのされかうべ出る事

二十 毒草(どくさう)の事

 

 やまと怪異記六

 第一 瀨川主水(せがはもんど)かたきうちの事

 慶長年中、藝州に、瀨川左近といふ侍あり。

 其子に、主水とて、廿歲(はたち)になる男子(なんし)あり。

 同国の住人、山田新左衞門といふものゝむすめ、十五歲になれるを、

「よめにせん。」

ことを約しながら、いまだ、むかえざりし内に、かの左近、朋輩(ほうばい)の木崎(きざき)弥五郞といふ者と、不圖(ふと)、口論を仕出《しいいだ》す。

 弥五郞、左近を討(うち)て、その座をたちのき、かげを、かくせり。

 これによつて、主水、かたきの行衞(ゆくゑ[やぶちゃん注:ママ。] )をたづねて、

「父があたを、むくゐん[やぶちゃん注:ママ。]。」

ことを思ひ、弥五郞がたちのきたるかたをはかりて、たびたび、折ふし、父がよめに約せし山田が女子(によし)、乳母(うは[やぶちゃん注:ママ。])一人を具(ぐ)して、主水がもとに來り、對面し、女ながらも、ともなひ行《ゆき》て、

『しうとの、かたきをうたん。』

ことを、再三、こひ、のぞみしかども、主水、其心ざしは、うれしけれ共゙、かへつて、さまたげとなるなれば、

「そのまゝ、国もとに、のこりゐて、わがかへりを、まちてたべ。」

と、いさめつゝ、山田が宅に、をくり[やぶちゃん注:ママ。]とゞけ、その身は、すぐに、たびだちけるとぞ、聞えし。

 かくて、翌年(よくねん)四月十四日、するがの国にて、弥五郞が住所(《ぢゆう》しよ)を聞出《ききだし》し、

「明日、をもむかん[やぶちゃん注:ママ。]。」

とする夜のゆめに、藝州にのこせる妻(さい)、來り、すけ太刀(だち)うつて、敵(かたき)の首(くび)を得たり、と、みて、翌朝(よくてう)、かたきのかくれがに、たづね行《ゆき》、なのりかけて、思ひのまゝにうちおほせ、本国にぞ、歸りける。

 しかるに、藝州に有《あり》ける妻、四月十四日の夜(よ)、をつとと共に、かたきをうつ、と、ゆめ、み、翌朝(よくてう)、をきて[やぶちゃん注:ママ、]、父母(ちゝはゝ)にかたり、

「うれしや。主水どの、けふこそ、かたきをうちて、本望(ほん《まう》)をとげ給ひたれ。」

と、いひしかば、父母をはじめ、をのをの[やぶちゃん注:ママ。]、

「世のことわざにも、『おもひねのゆめ』といふ事あり。いと、はかなし。」

と、わらひけるに、其後《そののち》、主水、藝州にかへり、かたきうちの次㐧(しだい)、旅宿(りよしゆく)にてのゆめを、かたるに、妻がゆめみし刻限と、少《すこし》も、たがはざるぞ、ふしぎなれ。

 主水は父が跡式(あとしき)に、弥五郞が知行まで、くだし給《たまは》り、山田が女子を妻(さい)とし、子孫まで、繁昌しけるとかや。「異事記」

[やぶちゃん注:「異事記」は不詳。「近世民間異聞怪談集成」の解題で土屋氏も、本書を『該当する資料名が不明なもの』の一つに入れておられる。

「慶長」一五九六年から一六一五年まで。江戸幕府開府の前後。

「瀨川左近」不詳。]

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