萩原朔太郞 一九一三、九 習作集第九卷 狼殺し
[やぶちゃん注:電子化注の意図及び底本の解題と私の解説は初回のこちらを参照されたい。
底本は以上の昭和五二(一九七七)年五月筑摩書房刊「萩原朔太郞全集」第二卷を用いるが、電子化では、下段に配されある誤字などを編者が修正していない原ノートの表記形を元とした。
当初は、既に決定稿の注で私が電子化したものは、単純に飛ばして電子化しようと思ったが、読者に対して「習作集」の内容を順列で確認出来る便宜を図るため、既注のそれを標題とともにリンクを貼ることに敢えてした。
前の「(いはん方なきさびしさに……)」の後は、以下で電子化注済み。
「おもいで」→「おもいで 萩原朔太郎」本文
「寫眞」→『萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺稿詩篇 編者前書・「靜夜」』の私の注の一番最後の詩篇
「もみぢ」→『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 もみぢ』の私の注及び『萩原朔太郞「拾遺詩篇」初出形 正規表現版 もみじ』の私の注
「冬をまつひと」→『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第一(「愛憐詩篇」時代)」 (無題)(こほれる利根のみなかみに) 「冬を待つひと」の草稿の一つ』の私の注の中の二番目の詩篇]
狼殺し
疾患背隨の心棒より光を發し
その反映をもて殺さんとするの狼だ
ゆうべとなれば
素つ裸となして殺戮するの狼だ
狼を血みどろにし
われの心棒をば血みどろにし
そこに菊をうえ
そこに松をうえ
そこに電針をうえ
その怖るべき疾行をとめ
狼をやぶり殺さんとして
われの心棒にも砥石をぬり
しづかにこらへきたらんとするの日暮をまてば
井戶の底にもその水のすべてを涸れつくしぬ、
[やぶちゃん注:「疾患背隨」「背隨」はママで、「脊髓」の誤記。「ゆうべ」もママ。「菊をうえ」以下の三箇所の「うえ」もママ。]
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