萩原朔太郞 一九一三、九 習作集第九卷 病兒と靑い紐 / 一九一三、九 習作集第九卷~電子化注~了 / 筑摩版「萩原朔太郞全集」初版第一卷・第二卷・第三卷所収詩篇(正規表現版)電子化注~ほぼ完遂
[やぶちゃん注:電子化注の意図及び底本の解題と私の解説は初回のこちらを参照されたい。
底本は以上の昭和五二(一九七七)年五月筑摩書房刊「萩原朔太郞全集」第二卷を用いるが、電子化では、下段に配されある誤字などを編者が修正していない原ノートの表記形を元とした。
当初は、既に決定稿の注で私が電子化したものは、単純に飛ばして電子化しようと思ったが、読者に対して「習作集」の内容を順列で確認出来る便宜を図るため、既注のそれを標題とともにリンクを貼ることに敢えてした。
前の「狼殺し」の後は、以下で電子化注済み。
「顏」→『顏 萩原朔太郎』の本文、及び、『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 顏』の私の注
「(かくしも我が身のおとろへ來り……)」→『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 蝕金光路 / 附・別稿その他(幻しの「東京遊行詩篇」について)』の私の注の二番目に詩篇
「病氣の探偵」→『萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺稿詩篇 病氣の探偵 / 筑摩版全集所収の「病氣の探偵」の草稿原稿と同一と推定』の私の注の最初の詩篇
なお、この「病兒と靑い紐」の後は、以下の、
「九月の外光」→「萩原朔太郎詩集 遺珠 小學館刊 遺稿詩篇 九月の外光」の私の注
「土地を堀る人」(「堀」はママ)→『「萩原朔太郎詩集 Ⅴ 遺稿詩集」(小学館版)「第三(『月に吠える』時代)」 土地を掘るひと』の私の注
「つみびと」→『萩原朔太郎詩集「月に吠える」正規表現版 卵』の私の注の最後の詩篇
で電子化注済みで、この「つみびと」を以って、「一九一三、九 習作集第九卷」は終わっている。
これを以って、筑摩版「萩原朔太郞全集」初版の第一卷・第二卷・第三卷に所収する詩篇の殆んどの電子化注を終えたと考えている。暫らくしたら、漏れがないか検証する。
なお、私が「ほぼ完遂」と言っているのは、萩原朔太郎が先行する詩集で発表したものの、後の詩集の中でチョイスして再録した際に、手を加えているものが有意にあるのだが、それは、以前に述べた通り、表現の〈改悪〉を伴うものが甚だ多く、そうした若き日の詩想の霊感の消失の失望させる改悪作品まで、私は再現する気は、もともと、さらさら、ないからである。全集では、それらの多くは、初出の校異で示すに留めてある。私は後発の再録を多く含む詩集の正規表現版でも、そうした理由から、再録作品を原則として電子化していないし、向後も、まさに、そうした〈老害の醜悪なる改変詩篇〉までわざわざ示すことは、ない、であろうからである。]
病兒と靑い紐
窓からさがった紐
靑い紐
はてしもなく廊下がつゞき
厚い壁のうしろに
ラセン梯子の光る光る施囘
登る二階
三階
四階
五階
その床は月光にぬれ
月光の中にBEDがある
いつもい眠るところの
遠い哀しい寢臺がある
行けども行けども
はてしもない病院の廊下の
ひとつひとつの高い窓から
靑い絹糸の紐がさがつて居るよ、
[やぶちゃん注:「施囘」はママ。「旋囘」の誤記。「BED」は縦書。]
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