明恵上人夢記 96
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一、此の觀法の式を撰(せん)ずる間、夜々、好(よ)き夢、有り。常に貴人之寵愛を蒙ると云々。其の中に未だ撰ぜざる以前なり。
[やぶちゃん注:底本の記載順列に疑問があるため、時制推定は不能。「84」の私の冒頭注を参照されたい。但し、「95」の河合速雄氏説に従うなら、承久二(一二二〇)年となる。
ここでは、彼が、ある観想法を選んだ後よりも、それを『どれを今度(このたび)の観想法にしようか?』と悩んでいる時に限って、寧ろ、不思議に素敵な夢を見たよなぁ、と感慨しているような感じであろうか。]
□やぶちゃん現代語訳
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今、現在、私が行っている観想法をまだ「選ぼう」と思案している間に、毎夜、良き夢を見た。それは、どれも常に、優れたある高貴な方から寵愛を受けるといった夢で……
……いや……まだ、この観想法に決定(けつじょう)する以前の時期にこそ、私は、その良き夢を見ていたのであったなぁ。