大和怪異記 卷之六 第四 幽㚑子をはごくむ事
[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここ。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。
正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。]
第四 幽㚑(《いう》れい)子(こ)をはごくむ事
紀州にある人の妻、懷姙し、程なく、死ぬ。其夜より、幽靈、來り、かの子に乳をふくめ、朝は、かへる。
其子、三歲になりて後、又も、來らず。
盛人(せいじん)の後に「彥四郞」と、いひし。
恩愛のみちほど、あはれなることは、あらじ。同
[やぶちゃん注:原拠は前話と同じで「犬著聞集」。「犬著聞集」自体は所持せず、ネット上にもない。また、所持する同書の後代の再編集版である神谷養勇軒編の「新著聞集」にも採られていないようである。これも本邦で定番の亡き母の子育て怪談だが、これほどシンプル纏めたものは、まず、他では見られない。先行する類話「卷之四 第十一 孕女死して子を產育する事」の私の附した注以外にはつけようがない。「紀州」とあるが、恐らく南方熊楠も言及していないはずである。]
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