毛利梅園「梅園介譜」 蛤蚌類 狐貝 / ザルガイ或いはナガザル
[やぶちゃん注:底本の国立国会図書館デジタルコレクションのここ。画像はトリミングした。左丁に、『以上筑前産』と条立てし、後に『筑前隱士君ヨリ小澤弾正江被送予乞之眞寫』(筑前の隠士君(いんしくん:匿名化してある)より小澤弾正え(へ)送らる。予、之れを乞ひて眞寫す。)と記す。十二個体(腹足類一種以外は斧足類)の見開き図。]
「百貝圖」
狐貝
[やぶちゃん注:実は、「狐貝」の名は、先行する「蛤蚌類 狐貝 / モシオガイ・ウスモシオ?」が挙がっているが、ご覧の通り、全くの別種であるので参考にならない。
斧足綱異歯亜綱マルスダレガイ目ザルガイ超科ザルガイ科ザルガイ亜科ザルガイ属ザルガイ Vasticardium burchardi
或いは、近縁種の、
ナガザルVasticardium enode
に比定してよいだろう。吉良図鑑によれば、前者が強い放射肋が四十三内外、後者が三十九内外とある。この向きだけでは、本個体の肋数は正確には数えられないが、目の詰まりがやや空いて見えるので後者の可能性があるかも知れない。和名は形状から笊貝である。
「百貝圖」何度も出てくるが、再掲しておくと、寛保元(一七四一)年の序を持つ「貝藻塩草」という本に、「百介図」というのが含まれており、介百品の着色図が載る。小倉百人一首の歌人に貝を当てたものという(磯野直秀先生の論文「日本博物学史覚え書Ⅺ」(『慶應義塾大学日吉紀要』(第三十号・二〇〇一年刊・「慶應義塾大学学術情報リポジトリ」のこちらからダウン・ロード可能)に拠った)。「狐貝」の異名は残っていないが、形状が狐の頭に似て、黄褐色の色彩から、腑には落ちる。]
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