大和怪異記 卷之七 第十五 妻が幽㚑凶をつぐる事
[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここと、ここ(右丁挿絵はずっと前の無関係なもの)。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。
正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。]
第十五 妻(さい)が幽㚑(《いう》れい)凶《きよう》をつぐる事
信州すはの町人、妻(つま)にをくれ、後妻(こう《さい》)をむかへり。
前妻の子を、江戸に出《いだ》し、奉公させける。
あるとき、男、用、有(あり)て、他所にいでけるに、先(さき)の妻(つま)に行《ゆき》あひし。
妻がいはく、
「今の女《にやう》ばうを、はやく、りべつすべし。御身のために、あしきものなり。我、まつたく、ねたみて、いふには、あらず。かれが來て、このかた、ものごと、心のまゝに有《ある》べからず。これにて、おもひしり給へ。又、せがれも、江戸にて、かぎりに煩(わつらひ[やぶちゃん注:ママ。])侍る。やがて、死(しぬ)べし。」
と、いふて、わかれける。
おとこ[やぶちゃん注:ママ。]、それより、江戶に人をつかはしければ、いひしにたがはず、子、わづらひて、ほどなく、むなしくなれり。
これに、おどろきて、いまの妻を、りべつしける。同
[やぶちゃん注:「犬著聞集」原拠。「新著聞集」には載らないようである。注すべき必要を感じない。]
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