大和怪異記 卷之七 第八 四子をうむ事
[やぶちゃん注:底本は「国文学研究資料館」の「新日本古典籍総合データベース」の「お茶の水女子大学図書館」蔵の宝永六年版「出所付 大和怪異記」(絵入版本。「出所付」とは各篇の末尾に原拠を附記していることを示す意であろう)を視認して使用する。今回の本文部分はここ。但し、加工データとして、所持する二〇〇三年国書刊行会刊の『江戸怪異綺想文芸大系』第五の「近世民間異聞怪談集成」の土屋順子氏の校訂になる同書(そちらの底本は国立国会図書館本。ネットでは現認出来ない)をOCRで読み取ったものを使用する。
正字か異体字か迷ったものは、正字とした。読みは、かなり多く振られているが、難読或いは読みが振れると判断したものに限った。それらは( )で示した。逆に、読みがないが、読みが振れると感じた部分は私が推定で《 》を用いて歴史的仮名遣の読みを添えた。また、本文は完全なベタであるが、読み易さを考慮し、「近世民間異聞怪談集成」を参考にして段落を成形し、句読点・記号を打ち、直接話法及びそれに準ずるものは改行して示した。注は基本は最後に附すこととする。踊り字「く」「〲」は正字化した。なお、底本のルビは歴史的仮名遣の誤りが激しく、ママ注記を入れると、連続してワサワサになるため、歴史的仮名遣を誤ったものの一部では、( )で入れずに、私が正しい歴史的仮名遣で《 》で入れた部分も含まれてくることをお断りしておく。]
第八 四子をうむ事
備後国神石郡神邊町、油や久兵衞が妻、四子を、うむ。三子は男、一子は女なり。
四人目にうみしは、髮、ながく、齒、ことごとく、はえ[やぶちゃん注:ママ。]、ひたゐ[やぶちゃん注:ママ。]に、二つの角(つの)、生《おひ》たり。藥砕堀といふ所にすつ。一声《こゑ》も、なかず。同
[やぶちゃん注:「犬著聞集」原拠。これは、幸いにして、後代の再編集版である神谷養勇軒編の「新著聞集」に所収する。「第十 奇怪篇」にある「四子(しこ)を同產(どうさん)す」である。早稲田大学図書館「古典総合データベース」の寛延二(一七四九)年刊の後刷版をリンクさせておく。同合巻「四」のここ。そちらでは、最後に『かく四子をうめる事は和漢ともにたぐひある事とかや』と結んでいる。本篇と同じく、四人目が、男児だったのか、女児だったのかは、記されていない。
「備後国神石郡神邊町」備後国の「神石郡」(現行では「じんせきぐん」。古くは「神石」を「かめし」とは発音したと当該ウィキにはある)には「神邊町」はない。また、「新著聞集」には『神石郡』(『かみいしこほり』と振る)『袖辺町(そてべまち)』(「て」はママ)とするが、「袖辺町」というのも、ない。調べると、現在の広島県福山市神辺町(かんなべちょう:グーグル・マップ・データ)があるので、ここであろう。
「藥砕堀」「藥硏堀」の誤記か。「新著聞集」は捨てた場所を明記しない。現在の福山市神辺町にそのような地名は見えない(因みに、全く離れるが、広島市内にならば、中区に地名として「薬研堀」があった。参考までに)。]
« 大和怪異記 卷之七 第七 無尽の金をかすめとりむくゐの事 | トップページ | 大和怪異記 卷之七 第九 疱瘡にて子をうしなひ狂氣せし事 »