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2023/02/09

大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「しろき月」・「秋の夜の夢 (斷章二十二篇)」

 

[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はない。後の篇の「🦋」は前に使用したように、それとなく置いたもので、元は白抜きで、 もっとシンプルな図柄である。]

 

 し ろ き 月

 

しろき月

そらにかかれば

風ながく

ゆふぐれの耳ぞかそけし

 

 

 

 秋の夜の夢 (斷章二十二篇)

 

   🦋

 

汝(な)がうはさ ききてさへ

胸ときめきつ ときめきつ

われしらず 心のふるふ

 

   🦋

 

うるはしき 汝がゑがほをば

われにはあらで

ゆかりなき 人にあたふる

かなしみは 淵瀨(ふちせ)のごとし

 

   🦋

 

ゆめのなかにて

またも ゆめみき

汝(な)がすがた 汝(な)がこゑを

 

   🦋

 

かぎりなく 心しづめる夜(よ)のゆめに

汝(な)が髮のおぼろのにほひ

わが想ひをば 飾るなり

 

   🦋

 

思ひつつ 思ひつつあれど

なほ おもひたらず

ゆめにみつつも くるしめり

 

   🦋

 

ゆめにさへ わが心よわくして

汝(な)がかたはらに ちかよれず

おもはゆき心もて あこがるる

 

   🦋

 

ああ ゆめよ ゆめよ

せめては ゆめに

わが想ひ 驅けらせむもの

 

   🦋

 

汝(なれ)をおもへば

さびしさの あふれきて

わが心 こほれるごとし

 

   🦋

 

このゆめに

きよらなる このゆめに

ねがはくば われ死なむ

おもひの鳥と われ死なむ

 

   🦋

 

くるしみは ゆめのなかにも

かさなりつ

くさむらの 繁みにしづむ

 

   🦋

 

あへぎつつ なげきのなかにうづくまる

わがゆめの さびしさ

指さへも のぶるあたはず

 

   🦋

 

汝(なれ)をおもへば いやさらに

こころ はぢらひ

ゆめにさへ ことばもいでず

 

   🦋

 

ゆめも ゆめ うつつも うつつ

汝(なれ)あればこそ

この世なりけれ

 

   🦋

 

われとわが 心いたはりつ

せめては ゆめに語らむとすれど

わが心よわくして 甲斐もなし

 

   🦋

 

ゆめの さなかに

ひとのいのちの はかなさを知りけれど

わがおもひ たゆるなし

 

   🦋

 

汝(な)がこゑに 汝(な)がこころを偲び

そよかぜに浮く柳のごとく

わがおもひ ながれ ながれぬ

 

   🦋

 

かすめるごとき ゆめの心に

汝(なれ)をおもひつ 汝(なれ)をおもひつ

みちもなき 野のなかに

われは さまよふ

 

   🦋

 

こころのなかの 花びらの

にほひつつ 散りゆくを

風なきに ちりゆくを

 

   🦋

 

汝(な)がために 夜(よる)の祈りをささげつつ

かなしき秋のゆめに入る

ゆめ路はとほく みちもなし

汝(なれ)をおもひて ひたすらに辿りゆくのみ

 

   🦋

 

ひらかざる みしらぬ花の

影をふくみて をののけり

ひかりある影をふくみて たゆたへり

 

   🦋

 

秋の夜の 夢あはくして

はかなさは 水のごとかれ

このゆめの つづきゆくまで

 

   🦋

 

ゆめのなかにて 雨ふれど

いづくともなく 鐘のなりいづ

み寺より 鐘のなりいづ

 

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