大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「白き夢」・「夜每に汝が健康を祈る (斷章六篇)」・「輝く月」
[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はない。後の篇の「🦋」は前に使用したように、それとなく置いたもので、元は、白抜きで、 もっとシンプルな図柄である。]
白 き 夢
しろきゆめありて
日ごとにわれをかこみぬ
夜といはず 晝ともいはず
かのあはあはと
こずゑのはてに ゆらめける
ひとふさの花あるごとく
こゑごゑをよびかはすなり
夜每に汝が健康を祈る (斷章六篇)
――汝がために祈ること三年になりぬ――
🦋
われ 心よわくして
このおもひ
ささぐるに すべもなければ
🦋
かなしみは 心にあれど
われひとり まよなかに
汝(な)がために いのりてあれば
幸の われにきたれり
🦋
ひとり坐し
みたび よたび 汝(な)がためにいのれば
わが心 やすらぎて
いとも しづかなり
🦋
汝(な)がために いのりうる
かたじけなさに
ほろ ほろ と
心のなかに なみだながるる
🦋
われ病めるときにも
汝(な)がために いのりき
まこと 心をこめて いのりき
ああ
なんといふ うれしさよ
🦋
ひととせも 汝(なれ)を見ざれど
汝(な)がために 夜ごと祈れば
汝(な)がすがた いよよあかるし
輝 く 月
このかがやける
月の すなほさ
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