大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「しろき花」・「靑きまぼろし」・「影は咲く」・「かなしみ」・「泣かざる日なし」・「君病めりときけば」・「幻」
[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はない。]
し ろ き 花
むなしき おゆびもて
まさぐれば
しろき花 ゆるるがごとし
暮れなやむ ゆふぐれのとき
靑きまぼろし
かなしさに
いのち絕たむとおもへども
なほ はるかにや
おぼろなる あをきまぼろし
まぼろしの
ふるへつつあり ふるへつつあり
いのち絕たむとおもへども
はるかなる あをきまあぼろし
影 は 咲く
そのかげは ひかりをうばへり
おともなく たたずみつ
しどろにも
ひかりをうばへり
この日 われに耳なくて
そのかげは
しきりに みだれさきけり
か な し み
このかなしみは すがたもなく
ただ ひたすらに
かげをつくれり
泣かざる日なし
なみだなき日はあれど
こころ さびしさに
泣かざる日なし
ひそかに ひそかに
きみがまぼろしをいだきて
君病めりときけば
きみ病めりときけば
胸ふたがれて
身のふるふなり
そこしれぬ寂しさの
藻のごとく からみくるなり
幻
かすかにも
水阿波(みなわ)のあれど
こともなく
とほきこずゑに
たたずめり
あはれ
あとなし
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