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2023/02/17

大手拓次譯詩集「異國の香」 「夢幻の彫刻」(ボードレール)

 

[やぶちゃん注:本訳詩集は、大手拓次の没後七年の昭和一六(一九三一)年三月、親友で版画家であった逸見享の編纂により龍星閣から限定版(六百冊)として刊行されたものである。

 底本は国立国会図書館デジタルコレクションの「国立国会図書館内/図書館・個人送信限定」のこちらのものを視認して電子化する。本文は原本に忠実に起こす。例えば、本書では一行フレーズの途中に読点が打たれた場合、その後にほぼ一字分の空けがあるが、再現した。]

 

  夢 幻 の 彫 刻 ボードレール

 

奇妙な化物ははれのかざりに、

ただ、 異形の風をする醜い冠を

その瘦骨の頭のうへにをかしくのつけてゐた。

拍車もなく、 鞭もなく馬をあへがせる、

てんかん病みのやうに鼻から泡をふく

その身とおなじやうな妖精の不思議な駑馬を。

空間をよぎりて彼等ふたりは沒し、

おぼつかない蹄のはてなさを押しせまる。

騎士はその馬のふみしだく名もない群のうへに

もへたつ刀(かたな)をひらめかす。

そしてわが家を監視する王侯のやうに、

無限の、寒冷の、境界なき墓場を徘徊する、

そこに、白い艷のない太陽の微光のなかに

古今史上の人人はかくれふしてゐる。

 

[やぶちゃん注:本篇は「国立国会図書館サーチ」の「ボードレール = Charles Baudelaire : 明治・大正期翻訳作品集成」(ボードレール著/川戸道昭・榊原貴教編集/二〇一六年大空社刊)の書誌で調べたところ、大正四(一九一五)年四月一日発行の『地上巡禮』初出であることが判明した。標題は「彫刻」とあるが、以下の原詩や、記すところの創作事実に従うなら、“gravure”は「版畫」と訳すべきところである。

 「駑馬」「どば」。足ののろい馬。

 所持する堀口大學譯「惡の華 全譯」(昭和四二(一九六七)年新潮文庫刊。この本の優れている点は歴史的仮名遣・正字版であることである)の本篇(堀口氏の標題訳は「或る版畫の幻想」である)の訳者註に、『雜誌『現在』一八五七年十一月十五日號に發表』されたもので、『この時の題は「モーテイマーの版畫」といふ表題だつた』。『モーテイマー(一七四一年――一七七〇年)は怪奇な題材を好んで扱ったイギリスの畫家』とある。但し、壺齋散人(引地博信)氏のサイト「フランス文学と詩の世界」の「幻想的な版画(ボードレール:悪の華)」によれば、『この詩は、モーチマーの原作をもとにしたヘインズの版画「馬上の死神」に触発されて書いたものだ。1784年に出版されている』。『版画そのものは、死をテーマにしている。だが単に死のおぞましさを表現するだけでなく、それを生との対比で描いていることは、死神がカーニバルの王冠をかぶっていることに表されている』。『ボードレールはそこに詩情を感じたのであろう』と解説され、当該のヘインズの版画も画像で見ることが出来る。この原作家であるが、複数の作品のタッチからみて、ロンドン生まれの画家・版画家ジョン・ハミルトン・モーティマー(John Hamilton Mortimer  一七四〇年~一七七九年:堀口のそれは誤り)で、インスパイアしたのは、イギリスの画家・版画家ジョセフ・ヘインズ(Joseph Haynes 一七六〇年~一八二九年)であることが、判明した。英文サイト「alamy」のこちらにヘインズのそのエッチングが載り、そこに“Death on a Pale Horse - 1784, after the drawing of 1775 - Joseph Haynes (English, 1760-1829) after John Hamilton Mortimer (English, 1740-1779) -Captions are provided by our contributors.”という注意書きで確定である。モーティマーの原画はWikimediaのここで巨大な精細図が見られる。これを見ると、両者は非常によく似ており、而して当然、孰れの画題も「蒼ざめた馬の上の死神」である。以下、ボードレールの原詩を示す。英文サイトの英訳附きのページのものを使用し、他のものと校合確認した。

   *

 

     Une gravure fantastique   Charles Baudelaire

 

Ce spectre singulier n'a pour toute toilette,

Grotesquement campé sur son front de squelette,

Qu'un diadème affreux sentant le carnaval.

Sans éperons, sans fouet, il essouffle un cheval,

Fantôme comme lui, rosse apocalyptique,

Qui bave des naseaux comme un épileptique.

Au travers de l'espace ils s'enfoncent tous deux,

Et foulent l'infini d'un sabot hasardeux.

Le cavalier promène un sabre qui flamboie

Sur les foules sans nom que sa monture broie,

Et parcourt, comme un prince inspectant sa maison,

Le cimetière immense et froid, sans horizon,

Où gisent, aux lueurs d'un soleil blanc et terne,

Les peuples de l'histoire ancienne et moderne.

 

   *]

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