大手拓次詩畫集「蛇の花嫁」 「薔薇のひと」・「雨のしぶく日」・「この願ひゆるされよ」
[やぶちゃん注:底本その他は始動した一回目の私の冒頭注を参照されたい。特にソリッドに公開したのには意味はない。]
薔薇のひと
その あをき
まぶたの はづれに
しづみゆく ゆめをやどらせ
あめの日の 花のすがたに
うかびくる
かのしろき
うばらのひと
[やぶちゃん注:「うばら」は「茨・荊棘」で刺のある植物の汎称である茨(いばら)を指すが、別に野茨(野薔薇とも言う。双子葉植物綱バラ亜綱バラ目バラ科バラ亜科バラ属ノイバラ Rosa multiflora )の別称でもあり、ここはそれ。]
雨のしぶく日
わがこころ
わがものならず
はかなさに おびえつつあり
されどなほ
待つもののあるかのごとく
みしらざる花を ゆめみむ
この願ひゆるされよ
われ これより眠らむとす
ねむりのまへに
きみがために 幸(さち)を祈るなり
このねがひ ゆるされよ
このねがひ ゆるされよ
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